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□貴方がいなきゃ
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「ラークースー」


わたくしの名前を彼が呼ぶ。


「ラクス、どうしたのさ?」


突然押し黙ったわたくしに、キラは不思議そうな顔をして名前を呼んでくる。


「ラクス?」


わたくしは、返事をしない。いいえ、出来ない。

だって、今口を開いてしまったら…
きっと、嫌なことを言ってしまう。
彼に応えたら、泣いてしまう。


「…ラクス」

「………」

「………………」

「………………」


キラは、黙ってしまった。
小さくため息をついて、黙ってしまった。

どんどん泣きたくなって、体が震え始めてしまう。


「…泣いてる?」

「泣いてな…っ」



ぎゅうっ――と、キラに閉じ込められた。
強く強く、優しくぎゅうっと抱き締められた。
こんなにも暖かいぬくもりを彼はくれるのに、わたくしは淋しくて苦しくて。


「…ずっと一緒にいてくれますか?」

「うん」

「一緒に生きてくださいますか?」

「もちろん」

「…なら、ならもうっ!あんな無茶はしないでください…っ!」


貴方がいなくちゃ、わたくしは立っていられない。
貴方といなくちゃ、わたくしは何も出来ない。


「……恐かった?」

「…はい」

「…ごめんね?」


首を横に振って、“謝らないで良い”と告げた。


キラは零れた涙を丁寧にぬぐって、まぶたにくちづける。


「…愛してるよ、ラクス」


嬉しそうに微笑まれて、唇を合わせた。










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