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□嫉妬
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窓の向こうに桜が咲いている。
楽しそうに花を咲かせている。

僕ではない、彼と。




ラクスとアスランが婚約者だというのは知ってる。
それを、あっさり受け入れていた自分もいた。

――アスランの婚約者だ。

いつかのアークエンジェルで、微笑みながら告げたのは確かに僕だったんだ。


彼女の隣にいるのは僕ではないと、
アスランの隣にいるのはカガリではないと、当然のように思っていたのに。


なのに、いつから僕は彼らのかつての関係を嫌うようになってしまったのだろう。



アスランとラクスが二人でいると、どうしても彼等の近くに行けなくて。

何故だか、僕の入れない空間を作られてしまっているような、そんな気がして仕方ない。



「…ラクス」


窓ガラスに手を添えて、愛しい人の名前を呼んだ。


「…今、僕は一人だよ」


ねぇ、気づいてくれよ。


「…アスランとなんか一緒にいないでよ」


過去の時間は決して変えられない。
アスランとラクスが過ごした時間に、僕はいない。

だから、彼等の間には入れない。




「――――キラっ!」




遠くから、小さくラクスの声が聴こえた。
はっと、目を開けば彼女が僕に手を振っている。


「………っ」


僕は窓から飛び出して、ラクスの元へ駆け出した。


「ラクス!」


ラクスの名前を叫ぶと、彼女は少し驚いて微笑んだ。
僕の大好きな、優しい笑顔で。



―――別に良いじゃないか。


彼女の過去の時間がどうであれ。



「キラっ」


だって、彼女は“今”僕に笑ってくれてるのだから。











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