ブック8
□小さな愛を恋しい君に
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重い体を引きずって、ドアノブに手をかける。
ラクスは瞳を伏せたまま、ドアを開いた。
「はい、どちら様でしょうか…?」
まず目に入ったのは、砂など、汚れが全くついていない新品同様の白いスニーカー。
徐々に視線を上げていくと、
真っ黒なズボンに真っ黒なシャツ、
そして茶色のさらさらした髪に、深い紫色の真ん丸の瞳。
朱に染められた、目の前に立つ人物に
ラクスは一瞬瞳を奪われた。
「貴方は…誰?」
しばらく紫色の瞳を見つめた後、ラクスは首をかしげた。
問いかけられた“彼”は、無表情だったその顔を嬉しそうに歪めた。
「会いたかった」
発せられた声は
耳に心地よい低さ。
「僕は、キラ、です」
彼の泣きそうな笑顔に、ラクスの胸はぎゅっと締め付けられた。
end.