ブック10
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きっと、眉間にしわを寄せて、睨むんだろう。
「考えておきますわね。」
でも、僕の予感は外れた。
言葉自体は少し呆れが入っていたものの
その表情はとても柔らかかった。
クスクス笑う彼女を見ていると、僕も自然と笑っていた。
―ブブブブブッ
その時、ズボンの中に入れていた携帯が鳴った。
《今から会えない?》
それは、婚約者のフレイからだった。
少し考えた末、僕は席を立った。
当然、彼女は首を傾げる。
「ごめん、用事が出来たんだ。ここ、払っておくから。」
そう言って、伝票を取ろうとすると
彼女が先にそれを取った。
「私が誘ったのだから、私がお支払いしますわ。」
「いや、でも…。」
食べに行きたかったのは僕だったんだし…
それでも、彼女から引き下がるような態度が全く見えない。
「じゃぁ、今度お礼する。」
僕は、それだけ言うと店を出た。
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