ブック10

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昼間は、暑くても
夜はだいぶ涼しい季節。




さっきまで降っていた雨は上がって
寒さだけが肌を刺す。






「………」


私は、下を向いて黙った。







どうしよう、
どうしよう?




“好きかもしれない”だなんて、
何を言っているの?







その時、体が引き寄せられた。




「えっ……?」






私は、キラに抱き締められていた。







「僕も…君が好きだよ」


「……!?」








信じられなかった。
理解が出来なかった。


私の頭に浮かぶ、
赤い髪の女性。






この人には
恋人がいるのに…?







それでも、
どこかで嬉しく思う自分がいる。






「……これで、満足?」



キラの腕の力が弱くなる。




「……え?」






私の体がキラから離され、私はキラの顔を見た。






「それは同情だよ。」




キラは、嘲笑う様に言った。





「目が見えなくなる僕に同情して、僕のためになにかして
結局は自分が気持ち良いんだよ。
“良いことした”って。」







違う、のに…。









「さよなら、先生」












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