ブック10

□10
3ページ/16ページ






もしも、
もしも神様が本当にいるのなら、
どうかキラに優しくしてあげてほしい。



これ以上、
彼が傷付かないように、泣かないように…。
笑顔でいられるように…。





わたくしにはもう…
きっと、なにも出来ません。








*****



「こうやって、一緒に酒を飲むのも久しぶりですね」



ムウは微笑しながら、隣で酒を口に運ぶ男性を見る。


金の髪に、ヒゲを携えた、少し疲れた顔の男性は目を細めて笑う。



「……もうすぐ、家内と同じ年になるよ。ラクスは」


「…そうですね」



ムウは、遠い過去に思いを馳た。







――あれは、医者になりたてのムウが今の病院に赴任してきて、すぐのことだった。





彼が担当した患者の一人が、死んだ。









次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ