ブック10
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もしも、
もしも神様が本当にいるのなら、
どうかキラに優しくしてあげてほしい。
これ以上、
彼が傷付かないように、泣かないように…。
笑顔でいられるように…。
わたくしにはもう…
きっと、なにも出来ません。
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「こうやって、一緒に酒を飲むのも久しぶりですね」
ムウは微笑しながら、隣で酒を口に運ぶ男性を見る。
金の髪に、ヒゲを携えた、少し疲れた顔の男性は目を細めて笑う。
「……もうすぐ、家内と同じ年になるよ。ラクスは」
「…そうですね」
ムウは、遠い過去に思いを馳た。
――あれは、医者になりたてのムウが今の病院に赴任してきて、すぐのことだった。
彼が担当した患者の一人が、死んだ。
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