ブック10
□トレイン トレイン
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《―駅〜、―駅〜》
僕の降りる駅の一つ前に電車が停車する。
僕はこの駅が嫌いだった。
―ドドドッ
「……っ」
いつもたくさんの人が流れ込んでくるから。
わずかに空いていたスペースは一気になくなり、僕は端っこへと押しやられる。
「きゃ…」
ふと、小さな悲鳴が聞こえて、なんとなく振り返った。
―――とんっ
「………」
軽い衝撃が背中に当たる。
「すみません…」
「………いえ」
小声で謝ってきたその子は、淡い桜色の髪と晴れ渡った空色の瞳が印象的な―とても可愛い人だった。
――ガタン
電車が動き出した振動で、車内の立っている人達が少し動く。
「あっ」
僕の後ろにいた彼女が、人の動きに合わせられずに体のバランスを崩す。
僕は咄嗟に体を反転させて、彼女の肩を支えた。
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