ブック10
□トレイン トレイン
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僕は小声で彼女に話しかけた。
「大丈夫ですか?」
「はいっ。ごめんなさい、ありがとうございます」
彼女は恥ずかしそうに、困った笑顔を浮かべる。
その笑顔がとても可愛くて、自分の頬に熱が集まっていくのが分かった。
慌てて、彼女の肩から手を離そうとしたけど、電車が大きく揺れ、彼女がまたバランスを崩したから、そのまま肩に手を置く。
彼女は何度も困ったように頭を下げる。
「すみませんっ。満員電車に、まだ慣れていなくて…」
「気にしないで、僕は大丈夫ですから」
僕がそう言うと、彼女は僕の目を真っ直ぐに見つめて、優しく微笑んだ。
「……ありがとうございます」
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