長編
□昇る華、奏でるは歌。
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昇る華、奏でるは歌。(アスメイ)
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わかってる。
答えなんかないって。
…ううん、違うの。
答えは出てる。
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「…ただいま」
「おかえりなさい」
迎える笑顔は心映さず努めて明るく。
迎えられた青年も優しく微笑み返す。
紫青の絵具を暗闇で混ぜた髪は長く肩まで伸びていて、色白端麗な面を包み姿見良い。
瞳が翡翠に輝くのは彼の優しさ故か。
「…あ。ご飯、明日はいいから」
「ぁ、ハイ。わかりました」
彼女、否まだ少女というほうが近いだろうか、赤紅の絵具を背中まで落とした髪が柔らかく、桃肌愛嬌のある瞳をたてて姿愛らしく。
薄黄色のワンピースが健やかな身体を包み見暖かで。
少女でもない、しかしまだ女ではない。
彼女…メイリンはまさにその境界線にいる娘と云っていいだろう。
年若い真直ぐな瞳は、目の前かの姿を嬉しそうに映し出す。
「…いただきます」
「ハイ、どうぞっ」
明日は休みな、いつもの食事。
戦後すぐ再築されたマルキオ邸には仕事で時間差のあるアスラン、キラに備え食卓が二つある。
一つは子供たちとの大部屋、そして別館にあるこの小部屋。
別館にはキラ、アスラン、ラクス、メイリン、加えてバルトフェルド、ダコスタが暮らしていたがラクスがプラント議長監査役−議長不在の為役割は代表そのものだが−となり、二人を残し皆はプラントへ。
キラは頻繁にラクス連れずとも一人地球へ降下して会いにくる。
今日も帰宅したところで子供たちと戯れていた。
用件といえば毎回、アスランに会い−…
…そして姉に会いに。
四人程で埋まるだろうテーブルで向かい合わせに座る二人の食事はにこやかに進む。
「今日キラさんがティナに誘惑されてました」
「はは、俺もされたことあるよ」
「そうなんですか?」
「うん。…『けっこんちたげる!!』って。」
あはは、かわいい。
キラさんには『あいちてるわ!!』って言ってました。
…なんか負けた気がする…
そうですか?
うん。
食べる動きそのまま、頷く様は彼の方こそ子供のよう。
くすり、と笑うと瞳が合った。
刹那視線が交わる。
どきり鼓動が変わる。
あたたかい微笑。
しかしそれは瞬間。
「ぁ!お風呂沸いてますよっ」
入ります?
「…そうしようかな」
食事を終えると、アスランは浴室へ向かった。
−…あたし、知ってる。
答えが出てるの。
アスランさん、きっと…
だけどまだ…聞きたくない。
笑えるまで、…待って。