長編
□言ノ葉
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言ノ葉(シンステ)
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「…ぉにいちゃん」
僕らは小さい頃からいつもとなりにいた。
ずっと、ふたりで生きてきた。
妹は、僕の宝物。
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母は、早くに亡くした。
父は、仕事ばかりで目も向けない。
冷えた関係。
金銭面で生活に困ることはなかったが…、高校に入学するのをきっかけに俺は一人暮らしを始めた。
…妹、ステラのために。
「お前…、ホントシスコン。」
そう指摘するのは小学校からの仲であるヴィーノ・デュプレ。
彼は呆れながらも楽しんで家によく邪魔しに来る。
愛嬌のある円い瞳を童顔が囲み、屈託なく笑う無邪気な性格。無愛想なシンとは経緯解らぬ仲の良さだ。
茶髪の前面だけを橙に染め、本人曰く「高校デビュー」らしいのだが。
当然入学式早々即刻指導室に呼び出されていた。
「イテテ!だ〜から!自毛なんですって!」
…どんな自毛だか。
「よっ、お疲れ」
「…お前が。」
お疲れ。こっぴどくしぼられ、尚も折れぬ彼に学校側も「態度次第では停学」とするしかなく。
「あ〜ぁ。これで寄り道出来なくなっちゃったよ」
お前ん家以外。
そう悪戯に笑う親友に冷たく笑い返す。
「充分だろ?」
帰りもこうして待っててやったじゃん。
鞄を渡してやると二人で無人の教室を後にし弾むように学校を出る。
「それにしても可愛かったよなぁ、メイリン」
「…そうか?」
今日は朝からそれだ。
どうも同クラスの女子に一目惚れをしたらしい。
可愛い!!ヴィーノは教室内シン以外にも聞こえる発声と共に、早くも彼女に話しかけ名前を聞いていた。
幸いと云うべきか、彼女には彼の前言は届いていなかったようだが。
ヴィーノ曰く、華奢な花を纏ったようなまさに可愛らしい少女。
しかしシン視点でメイリンは『赤黒髪の女』というだけで。
「へーへー。ステラに勝る子はいないってね〜」
期待外れな返事にがっかりしたヴィーノは乾いた溜息を同時に吐く。
「別に、…そんなんじゃ」
好みが違うだけだろ。
シンは目を伏せて呟くように言う。
長年の彼だから伝わる、図星あてられた時の仕草。
「…ま、いいけど」
それよか飯食わねぇ??
呼び出しは昼を過ぎ、成長期二人の腹を叩いていた。
「適当に何か買って食べようぜ」
「…」
…成程早速俺の家か。