短篇
□せかい。
1ページ/2ページ
。。。せかい。(シンステ)
どこまでも青く広がる海に、零れ落ちる陽の光。
幼顔の少年は漆黒の髪をなびかせ、夕陽より紅いその瞳を眩しそうに細める。
寄せては返す波。濡れる足元を気にも止めず、少年はただ佇んで、否立ち尽くしていた。
『シン…』記憶の中響く細い声。
…そう、ステラは海が好きだったね。
出会ったのも、海。
『海、好き…。キレイ…』
ふわり肩に金髪を落とし白い肌に端正な顔。
桜色の唇からは見た目と裏腹な、断片的に切り取られた言の葉が紡がれる。
『俺の名前はシン。…君は?』
『シン…。…ステラ』
『ステラ!きっとまた会えるから!』
だがしかし再会は無数の管に繋がれた人質として。
『死ぬの…ィャ…』
造られた人間。
操作された体。
蝕む不安感。
『生きて渡した方が研究対象として…』
そんなの…!!
ステラが望んで造られた訳じゃないのに…ッ!!
『ステラ、一緒に行こう』
殺されるなら、帰して。
戻して。…託す人に。
−…
「…ッ」
なぜ戻してしまったんだろう。
戦いの無い世界に生きられない彼女を。
なぜ託してしまったのだろう。
戦いの場所に在る人に。
「…ぅッ…、く…」
噛み締めて込み上げてくるものは眼前握った両拳を濡らす。
ステラの世界は戦場だった。
…シンと出会うまで。
『シン…ステラ、好き…』
最初、瞳紅い。
海と反対。…ふしぎ。
だから青、あげた。貝殻。
シン笑う、ステラ…も。
ふわり…おなか温かい。
…嬉しい。
『ステラ!!俺が守るから!!』
…守る…、シン笑う。
また…あったかい。
うれしい。ステラ…笑う。
ステラ笑うと…シンも笑う。
…あったかぃ…
『ステラ…!!』
…シン、泣いてる…。
ステラ笑う…シン…泣いたまま笑う…。
…あったかい…。
けど…すぐ寒くなる…
…ステラ笑う…、シン、もっと…笑う…?
………笑って…
『ステラぁ…ッ…!』
『…シン…好、き…』
…あったかぃ…
閉じられた瞼。
もう二度と開くことはない。
『…ッ…!…ステラぁぁぁ…ッ!!』
守るって約束したのに…!!
俺が…!!俺の…!!
−…ッ、違うッ!!
振り乱す幼き頭に映るは、戦場での敵。
…青き翼。
「……フリーダム…ッ…!!」
紅瞳に闘志と憎悪の念を焦がし。
そこにはもう泪跡はなく。
シンは海を背に歩きだす。
ステラの世界を絶った者を討つために。
。。。END…??