短篇

□琴、弾み晴ぬ。
1ページ/2ページ

。。。琴、弾み晴ぬ。(アスメイ)




巻き込んだのは、俺で。

彼女の助けに甘えた。

後先考える余裕も理由も無かった。
無我夢中だったんだ。




…俺が、守らないと。





。。。
争いの火種は消えた。

しかし世界未だ混乱残る日々。
平和を希み静かだが確か動く情勢は国を立ち上がらせてゆく。

シンとキラが握手を交わしたその日から、アスランはメイリンを連れ地球、キラ達と共に場所変わらぬマルキオ新邸で暮らしていた。


海。深く沈む色は唯黒く。

アスランは夜風に背中を押され、眠れぬ夜浜辺を歩いていた。
青く紫を墨混ぜた肩かかる髪が風に靡く。
綺麗と云えば失礼だろうか、均整良き顔は青年を大人びて魅せる。




…あの時、外された指輪。
そして交わした言葉。

『…ありがとう…』

その台詞の真意は。


。。。
「アスランさんって…不器用ですよね」
彼女はそう言ってはよく笑う。
その瞳の奥に切なさと哀しみを隠し秘めて。

「そう…、かな」
反省ばっかりしてるよ。
情けないよな。
眉下げ自らを皮肉り笑う。
「ぁ、ぃぇ、そういう意味じゃ…」

…そして俺は、気付かない振りをする。

「…最低、だな…」

自嘲して零された笑みは闇に溶けた。

暗い海は今の自分を居心地良く包んでくれる。

変わる世界と。

混沌とした自らは闇に。


砂浜佇む視界を埋める黒。
波が揺れる。

近付く。

離れる。




…絶えぬ気持ちと似て。
揺れる気持ちにも似て。



まだ考える余裕がない。

今は望まない。

望めない。

俺には…決められない。



「…アスラン」
闇に響声近付く姿。
「キラ」
起きてたのか。
「そっちこそ」
風邪引くよ。
幼なじみはふわり微笑む。

潮風は甘く肌に触れる。

静か、しかし息苦しくはない沈黙が流れた。



「…話したの?」
破ったのはキラ。

「…ああ」

「そっか…」

「別れたよ」

「…うん」


視線は合わさず言葉は交わされてゆく。

「…アスランが納得した答えなら、いいんじゃない」



…納得。
させねばさせられるように切り出されただろう。

ならば自分で…。


「…ああ…、そうだな…」

「外は冷えるよ。中へ入ろう?」

「すぐ戻る」
先に行っててくれ。
…うん。じゃあ。
長年が生んだ視線、伝わる会話。





独り。

遠く何処か思惑の果てに。

アスランは彷徨っていた。







。。。RELOAD…
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ