短篇
□琴、弾み晴ぬ。
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。。。琴、弾み晴ぬ。(アスメイ)
巻き込んだのは、俺で。
彼女の助けに甘えた。
後先考える余裕も理由も無かった。
無我夢中だったんだ。
…俺が、守らないと。
。。。
争いの火種は消えた。
しかし世界未だ混乱残る日々。
平和を希み静かだが確か動く情勢は国を立ち上がらせてゆく。
シンとキラが握手を交わしたその日から、アスランはメイリンを連れ地球、キラ達と共に場所変わらぬマルキオ新邸で暮らしていた。
海。深く沈む色は唯黒く。
アスランは夜風に背中を押され、眠れぬ夜浜辺を歩いていた。
青く紫を墨混ぜた肩かかる髪が風に靡く。
綺麗と云えば失礼だろうか、均整良き顔は青年を大人びて魅せる。
…あの時、外された指輪。
そして交わした言葉。
『…ありがとう…』
その台詞の真意は。
。。。
「アスランさんって…不器用ですよね」
彼女はそう言ってはよく笑う。
その瞳の奥に切なさと哀しみを隠し秘めて。
「そう…、かな」
反省ばっかりしてるよ。
情けないよな。
眉下げ自らを皮肉り笑う。
「ぁ、ぃぇ、そういう意味じゃ…」
…そして俺は、気付かない振りをする。
「…最低、だな…」
自嘲して零された笑みは闇に溶けた。
暗い海は今の自分を居心地良く包んでくれる。
変わる世界と。
混沌とした自らは闇に。
砂浜佇む視界を埋める黒。
波が揺れる。
近付く。
離れる。
…絶えぬ気持ちと似て。
揺れる気持ちにも似て。
まだ考える余裕がない。
今は望まない。
望めない。
俺には…決められない。
「…アスラン」
闇に響声近付く姿。
「キラ」
起きてたのか。
「そっちこそ」
風邪引くよ。
幼なじみはふわり微笑む。
潮風は甘く肌に触れる。
静か、しかし息苦しくはない沈黙が流れた。
「…話したの?」
破ったのはキラ。
「…ああ」
「そっか…」
「別れたよ」
「…うん」
視線は合わさず言葉は交わされてゆく。
「…アスランが納得した答えなら、いいんじゃない」
…納得。
させねばさせられるように切り出されただろう。
ならば自分で…。
「…ああ…、そうだな…」
「外は冷えるよ。中へ入ろう?」
「すぐ戻る」
先に行っててくれ。
…うん。じゃあ。
長年が生んだ視線、伝わる会話。
独り。
遠く何処か思惑の果てに。
アスランは彷徨っていた。
。。。RELOAD…