小説
□戦慄
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「…くっ」
堪えきれなくなった鮫月が、噴き出した。
「はっははは、こりゃ傑作だ!!なんとも単純明快で清々しいなァ」
「鮫月殿!!笑う処ではありません!!」
他の兵達が言うが、鮫月の笑いは止まらない。
「…そうか。なら、私は何も言わないよ」
紅雷は、優しく微笑む。
「父上、ありがとうございます!」
「あぁ。それで、少年。君はどうする?」
紅雷が眼を向けると、少年はビクッと身を震わす。
「君がなりたくないなら無理にとは言わないし、望むなら見逃してやる事も出来る。だが、きっとここを出れば君は帝国軍に追われることになるだろうね」
「っ…」
「ここに居る限り、君は私が護るよ」
少年は、少し戸惑ったように視線を落とした。
「私はあなたに、あなたが嫌なことはさせませんよ」
晴瀬がそっと言うと、
「…本当に、軍から護ってくれるのか?」
「あぁ」
少年は顔を上げて、まっすぐに晴瀬を見る。
「…世話になる」
「えぇ、ありがとうございます!!」
ふわり、晴瀬は嬉しそうに微笑んだ。
□ ■ □ ■ □ ■ □
「とりあえず、お子様は寝ないとな」
鮫月が、晴瀬の頭をくしゃりと撫でた。
「お子様じゃありません!」
「はいはい」
「鮫月!!」
プンとする晴瀬を適当に宥める。
晴瀬ははぁ、と息を吐き出した。
「鮫月、ちょっと」
ちょいちょいと手招きして、鮫月に屈んでもらう。
晴瀬はそっと耳打ちした。
その内容を聞いた鮫月は、あからさまに面倒くさそうな顔をする。
「えぇ〜、俺忙しいんだけどォ」
「お願いしますよ。いつもサボってるしいいじゃないですか」
「それを言うのは卑怯だなとか思わないかなぁ?」
「思いませんね」
じゃ、お願いしますね。
そう言って晴瀬は少年に目を向けた。