あなた日和
□いつか、
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「岡崎!」
「ぅおう!!?」
勢いよく扉を開けたら、岡崎はビクっと肩を跳ねさせた。
何事かと驚くこいつなんかお構いなしで、ズカズカと岡崎の前まで行く。
「あんた、アレ嘘だったの!?」
「え、何が」
「初めてウチ来た時、今インターホン押そうとしてたって言ってたじゃん!」
「アレ?別に嘘じゃないけど」
「兄さんと会ったんでしょ!?私が出る30分前に!!」
家の前で、思いきり問いただす。
ただでさえ私に付き合わせてるのに、私が出てくるの待たせてたなんて気分が悪い。
だいたい、私の家に寄るだけの為に何時に起こしてたんだって話。
すると、岡崎は一度目を丸くして、バツが悪そうに頭を掻いた。
「あの日はどれくらい時間かかるか判んないし、結構早く来たんだよ」
「じゃあなんでインターホン押さないの」
「…まだ早過ぎるんじゃないかとか、さすがに迷惑かとか考えたり、変に緊張したりしてなかなか押せなかったんだ」
「…何、それ」
「イヤでも、あの時やっと押そうとしてたのは本当…」
「ぷっ」
私は、堪えきれずに吹き出した。
目を丸くする岡崎が、また面白い。
「ほんと、何それ!岡崎かわいー」
「なっ、はぁ!?」
「はははっ」
「お前笑いすぎ!」
まさか岡崎が、そんなピュアな奴だったなんて。
思ってもみなかった。
一通り笑って、私はチャリの荷台に腰を下ろした。
もう一週間ちょいになるけど、未だに慣れない。
私がちゃんと掴まったのを確認して、岡崎はチャリを漕ぎだす。
この視線に慣れることは多分ないと思うけど、この景色と風は気に入った。
「岡崎ー」
「んー」
「明日から、ちゃんとインターホン押してよ。早過ぎても怒ったりしないから」
「りょうかーい」
「あと、あんたの弁当作ってきた」
「…マジでか」
楽しみだと笑うこいつを、青空をバックに見る。
それにも、いつか慣れるのだろうか。
「何、揺れてる?」
「んーん、全然」
岡崎は漕ぐのがうまいから、いつもちゃんと安定してる。
だから別に揺れたりしてないし、怖かった訳じゃないけど、
なんとなく、腰に回した手に力を込めた。