君におくる唄

□プロローグ
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君に初めて会ったのは、いつだったかな。


すごく昔で、お互いに幼くて、とても懐かしい気がする。
どんなに考えても思い出せないけれど、その時の情景は、今でも眼を閉じれば瞼の裏に浮かびあがる程鮮明に覚えている。

その時の君の印象は…そうだな、やっぱり「可愛い」とか「元気」とかが当てはまるんだろうな。


家の近くにある、ありふれた公園。
僕はお母さんと一緒に遊びに来て、そう言えば君もお母さんと一緒だったね。

砂場で先に遊んでいた僕のそばに君が来て、きょとんと大きな瞳を僕に向けた。


「きみ、だれ?」


それが君の第一声。
見上げた僕の視界には、君の顔と青い空が一杯に拡がっていた。


――ほら、今も。



手をのばせば、君に触れそうな気さえしてくる。


今更何を言い出すんだと、君はきっと笑うんだろうね。
いつも君は笑っていたんだから。

何回か泣いたこともあった。
何回か怒ったこともあった。

でも、最後にはいつも笑ってた。


そんな君を見る度に、僕は優しい気持ちになれた。
どんなに哀しくても、どんなに苛ついても、君の笑顔だけで心が落ち着いたんだ。


君の笑顔が、なにより好きだった。


そのくせ、僕は何回も君を泣かせた。


そんな僕が言えることじゃないけれど、
もし君に何か一つだけ伝えることができるなら。

どうか、笑っていてくれないか。

僕は君を想って、唄を歌うから。
君が好きだった、あの唄を。


だからどうか、どんな時でも笑っていて。









君におくる唄
-第1章-


 

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