あなた日和
□初日
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「おはよう」
後ろから父さんの声がして、靴を履く私は振り返らずに声だけを返す。
「おはよう父さん、弁当そこ。ごはんはラップかけといた」
「あれ、今日は藍空が当番だっけ」
「うん。兄さんはもう行った。じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
鞄を持って、玄関を出た。
episode 2
「おはよー」
「おはよう。なんでいんの」
扉を出た先に待っていたのは、眠たそうな岡崎。
「やっぱ一緒に登校しないとなーって…」
「本当に徹底的だね。ていうかインターホン押せばいいのに」
「今押そうとしたら出てきた。タイミングよすぎ」
大きく欠伸をして、岡崎はチャリにまたがった。
「後ろ乗って」
「え、マジでか」
「マジで。歩くのめんどいじゃん」
妙な理屈を言う岡崎に、仕方なく私は後ろに腰かけて掴まる。
「重いよ」
「重くねーよ。男ナメめんな」
「ナメたつもりはないです」
「ならよし」
背中越しに、笑うのが見えた。
岡崎がこぎ出すと、心地いい風が頬を撫でる。
昨日から、こいつが私の彼氏。
表向きだけど。
「岡崎」
「んー」
「やっぱ恥ずかしいから降りていい?」
私達と同じ方向に向かって行く、私達と同じ制服を着た学生達がみんな私達を見てる。
そもそも、男子とニケツという行為自体が恥ずかしい。
「見せつければいいじゃん。こっちからすれば好都合」
「それでも恥ずかしいもんは恥ずかしいでしょ。私、真紀以外とニケツ初めてしたかも」
「それ、逆にすげーよ」
「だから降りていい?」
「却下。」