あなた日和
□ニセモノの心境
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今日は安藤の提案とやらで、いつもの中庭に達哉達が加わった。
あんまり本物のカップルと一緒に居ると、俺と藍がニセモノだってバレる気がして心配だ。
藍は全然気にしてなさそうだけど。
「私、ちょっとトイレ行ってくる」
「おっけー」
「いってらっしゃーい」
「行ってきます」
ブンブンと手を振る安藤に笑みをこぼしながら、藍は校舎の方へと駆け足で向かった。
藍は、安藤がいると少し雰囲気が変わる気がする。
episode 6
藍が居なくなった途端、少し張りつめる空気。
「…岡崎くんさ、当然気づいてるんだよね。あれ」
今までと全然違う目で、安藤が言う。
「あいは嘘がヘタだし、気づかない訳ないよね」
「まぁ、普通に解るよ。誰かにやられたぐらい」
「俺でも、中村さんはそんなドジじゃないって解るしね」
みんな気づいてて、藍には何も言わない。
俺も昨日、本当は「嘘つくな」って言いたかった。
でも、あんな風に笑われたら、何も言えなくなった。
コホン、と安藤が咳払いをする。
「それで私、今日一日観察及び調査してみました。あいにバレないように」
「ほう、結果は?」
「昨日の放課後、あいは三人組の女子に連れられて体育館裏へ。その後、保健室に入って行くところを目撃。その時刻に保健室には誰もおらず、先生は職員室に書類を取りにいってたそうです」
「…真紀ちゃん、授業受けてた?」
「サボったけど、まぁ気にしない!これからが重要なんだから。その三人組の女子ですが、目撃証言と私の目で怪しいのを見つけました!!」
「おおっ!すげぇ、お前何者!?」
「ふふふ、プロですから!」
プロ?なんの?
そう訊こうとした時、藍が駆けてくるのが見えた。
気になるけど、ここでこの話は中断される。
「おかえりー」
「ただいま」
安藤に見せる、俺と居る時とは違う笑み。
やっぱり、親友はだてじゃないってことか。
俺の視線に気づいたのか、藍はきょとんとする。
「なに?」
「いや、本当に仲いいなーって」
そう言えば、安藤が自慢気に胸を張って言う。
「まぁね。私とあいの感動的な出会い、聞く?」
「え、そんなすごいの?」
「そんな出会いじゃなかったと思うけど」
「充分感動的だよ!ね、達哉くん!」
安藤が振ると、達哉は一瞬困ったような顔をして、
「まぁ、人間ってすごいなとは思ったよ」
「ほら!」
「だからそんな大層なもんじゃないって」
安藤と藍の反応が違いすぎて、すごく気になる。
「その話聞きたい。いい?」
「え…別にいいけど」
藍に訊けば、何食わぬ顔でいいと言う。
きっと、なんでいいかどうか訊いてるのか解ってないんだろう。
藍がいいと言ったことで、安藤が嬉しそうに話し始めた。