あなた日和
□いくらでも
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プルル…
風呂上がり。
ぼーっとテレビを眺めてたら、携帯が鳴った。
開けた画面に表示された名前を見て、少し驚く。
通話ボタンを押して、携帯を耳にあてた。
「もしもし」
『岡崎くん?安藤ですけどー』
「うん、解ってる。こんな時間にどうかした?」
『別にメールでもよかったんだけど、やっぱ声聞いた方がいいからさ。今日、あいとどっか行った?』
藍?
意味がよく解らないまま、安藤は話を続ける。
『どこでもいいから。ちょっと会ったとか』
「いや、会ってないけど」
『そっか。じゃあ様子解んないね』
あぁ、なるほど。
要するに藍が心配だっただけか。
『あと、月曜にね――…』
episode 7
ピーンポーン
インターホンを押せば、すぐに出てくる藍。
「おはよー」
「おはよ」
その頬に貼られていた湿布は姿を消して、腫れた様子もなくて安心する。
「…あ、髪切った?」
「え、解んの?すごいね」
ちょっとだけね、と笑って藍は俺の後ろに回る。
「夏に向けて毎年切るんだ」
「今5月だけど」
「梅雨もじとじとしてうっといから」
やっぱりそうなんだ。
あんな湿気ムンムンしてるのに長い髪おろしたりして、女子は鉄人なのかと思ってた。
まだ爽やかな風を感じながら、学校に向けてチャリを漕ぐ。
「俺、今日も部活だけど、先に帰る?」
「…んーん。待ってる」
今、俺に少し悪いと思ったんだろうな。
最近、藍の考えてることが少し解るようになった。
「じゃあ教室で待ってて。終わったら行くから」
「解った」
ごめん、藍。
悪いのは俺の方。