あなた日和
□人混みに紛れる
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「あいー」
朝。
るんるんとした空気を纏って、真紀がやってきた。
「なに?」
「はい、これっ」
差しだされたのは、二枚の紙きれ。
episode 8
「映画のチケット?」
箸を止めてきょとんとする岡崎の頬は、すっかり元通りだ。
私は、コクリと一回頷いた。
「真紀がくれたんだけど、岡崎いる?」
「なんで?藍は行かないの?」
「一緒に行く人居ないし。あげるよ」
そう言うと、岡崎はまたきょとんとする。
私、変なこと言った?
「…藍、俺と一緒に行かない?その映画」
「は…い?なんて?」
「『俺と一緒に行かない?その映画』」
何故か、すごく真剣な顔して言う岡崎。
何故か胸が鳴って、鼓動が少し早くなった。
「いつ?」
「え…、明後日の土曜…だけど」
「藍、予定入ってる?」
「無いけど…」
「行こうよ」
「そ…それ、マジで言ってる?」
そう言えば、岡崎は相変わらずの表情で、
「マジだよ」
だって、これって、アレみたいじゃん。
デ、デートみたいじゃん…
「わ…私でいいの?他の友達とかっ」
「俺は藍と行きたい」
な、何言い出すんだこのやろう!!
そんな綺麗な顔で言っていいセリフじゃないよ!!
確実に早くなって、うるさい心音に耳を塞ぎたくなる。
「…じゃ、じゃあ…行く」
「よし、決定!」
その嬉しそうな笑顔に、確実に体温も上がった。