あなた日和

□嬉し恥ずかし
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あぁ、どうしよう。
超厄介な強奪事件発生。


「……マジでか」


どうやら、私はあの岡崎に心奪われてしまったようです。


…また自分で言ってダメージを受けてしまった。
普通に好きになったって言えば良かった。









episode 10









「どうするよ桃さん」


私は部屋で一人、白桃パンダに話しかけてみる。
くっそー可愛いなこのやろう。


私があいつを好き?


いやいやいやいや。
ダメだよ私、勘違いしちゃ。

誰だっけ、いじめっ子Aが言ってたじゃん。
勘違いしてんじゃねーみたいなこと。

あいつは誰にでも優しいんだ。誰にでもいい奴なんだ。
それがいいんだけど、でもダメだって。


どうせ、またフラれるよ。


まぁ、水城ん時はフラれたって言うのか疑問だけどさ。
あん時の岡崎みたいに、傷心の私を癒してくれる人なんてきっといないよ。
桃さんも、その時には憎らしくみえるかもしれない。ごめんよ桃さん。


「どうしよーう」


なんで私はこんな無謀な恋に落ちるんだ。
だってあれだよ、相手はイケメンでスポーツできて優しくてはにかむだぞ?
月とスッポンの鼻くそだよ。

どんなに考えても考えても、私は岡崎を好きという単純明快な結論で終わってしまう。
でもそれじゃダメなんだよ。

だって今のままじゃ、まともにあいつの顔見れない。話もできない。
昨日撮ったプリクラだって、ありえないぐらい扱いに困ってる。
プリ帳に貼るとなんかもったいない気がするし、だからといって他に保存方法も思いつかない。


小さな枠の中で笑うあいつ。
それを見るだけで、胸がきゅっとなる。

どこの少女漫画のヒロインだよ。


「藍、めし」

「…せめてノックしてから開けてよ」


何の前触れもなく入ってきた兄さん。
一応異性の部屋なんだし、入る前にノックとか声かけるとかあるでしょうよ。


「お、パンダ増えてる」


兄さんは白桃パンダの桃さんに興味を示した。
予想外だ。


「昨日ゲーセンのクレーンでゲット」

「え、お前が?」

「岡崎が」

「おー、優しい。俺ならお前に絶対そんなことしない」

「でしょうね」


だって、妹の失敗を高みから見下ろして笑うような兄だもの。


「それでパンダグッズ何匹目?」

「グッズを匹で数えるのはどうかと思うけど28匹目です」

「あ、飯だから」

「うん、聞いたよ」


ゴーイングマイウェイの兄さん。
私もあんたみたいになりたい。


「兄さんは悩みとかないんだろうねー」

「悩みとかなら普通にあるぞ。毎日悩んでる」

「へぇ、意外。何悩んでんの?」

「お前の将来。今んとこ、大学に行けるのか心配だ」

「高3のあなたに言われるとは思わなかった」

「俺は確実受かるから」


そんな台詞を吐き捨て、兄さんは行ってしまった。
私も一度でいいから、そんな賢そうな台詞を言ってみたい。
でもやっぱりそれは無理そうだ。
 
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