あなた日和

□雨の中、傘二つ
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プルル…
宿題なんかも終わらせて、もう寝ようと思っていた頃。
机に置いていた携帯が音をたてた。

開けた画面に表示された名前。
"真紀"

なんでこんな時間にと少し苛立ちながらも、通話ボタンを押した。


「はい、なんの用?」

『わお、ご機嫌ナナメだね。どうしたの?』

「うん、いいから用件だけを簡潔に5文字以内で述べようか」

『……プレゼント』

「プレゼント?」


意味不明だったので、無理な注文を付けるのはやめることにした。


「普通に言っていいよ」

『あ、そう?岡崎くんの好きなもの、達哉くんに訊いたんだー』


―マジで?









episode 11









あいつの誕生日、つまり6月6日が近づいている。
その事に気づいたのは、デート(仮)から帰った後だった。
後回しにすると確実に忘れてしまうであろう事は充分解っているので、あげるなら早めに用意しておきたい。

でも、男子に何をあげたらいいのか全く解らない。それが問題なんだ。

結局、相談相手は真紀しかいないんだけど…


『なんか達哉くんによると、その時の気分で変わるんだって』

「へぇ。その最悪な情報をくれる為にわざわざこんな時間に?わー、ありがとう」

『ちょ、あい怒らないで!』

「怒ってないよ。もう眠いから寝ていい?いいよね?」

『寝る前に私の意見も聞いてほしいなー!』


引きつった真紀の声が、電源ボタンを押そうとしてた私の指を止めた。
…まぁ、聞いてやらんでもないかな。


「なに?」

『(よかった…)あいは岡崎くんの彼女なんだしさ、直接訊いちゃえば?』

「それができればこんなことになってないよね」

『…ですよね』

「もういい?眠い」

『岡崎くんは!あいがあげたものなら、なんでも嬉しいと思うよ!!』


苦し紛れにしか聞こえない言葉に、疑問が生まれる。


「なんで?」

『だって、岡崎くん、あいのことすごく好きだもん』


またそれか。
絶対あり得ないから、そんなこと言わないでほしい。

だって、あいつ言ってたんだよ?初めて話した時に。
「好きな奴ぐらいは…」って。

これって、いるんでしょ?好きな人。
私は、自分の想いに気づく前からフラれてんだよ。

それをさ…


『あい?』

「…ごめん。もう寝るわ。ありがと」

『えっ?ちょっ…』


真紀が言い終わる前に、通話を勝手に切った。

テンションの落ち方がハンパない。
自分のうじうじした感じに嫌気がさす。

折角、岡崎が助けてくれたのに。
笑えるようになったのに。

これじゃ、逆戻りだ。


「桃さーん…。もう、やめたほうがいいのかな…?」


可愛すぎる桃さんに訊いてみても、返事はもちろん無い。

やっぱりこんな関係、ダメなのかな。


「俺もお前離す気無いから」


あれは本音?
それとも、真紀達がいたからついた嘘?

最初から嘘で繋がった私達は、やっぱりいつか終わるのかな。

どんな関係でもいい。
一緒に居て。隣で笑ってて。

そう思うのは、私だけ…?
 
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