あなた日和
□6月6日
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正座。ベッドの上でひたすら正座。
そんな私の前に、オレンジの携帯電話(お気に入り)が待ち構えてらっしゃって…
その携帯の画面には――アイツの名前。
「参ります!」
小さな決意に似たものを固めて、私は携帯の通話ボタンを押した。
プルル…
呼び出しのコールが鳴る。
1回、2回、3回…
コールの度に、私の心拍数は上がった。
それで、5回目。
『もしもし』
耳に届いた、岡崎の声。
「な、中村です」
『うん、解ってるよ。材料言って?』
促す声と何かを開ける様な音。多分冷蔵庫。
私は、こないだ買ったばかりの本を見ながら答える。
「えっと、卵…」
『あ、ないや』
…そこからか。
episode 15
今日は6月6日。
岡崎の誕生日。
「藍、邪魔」
「うるさい」
少しは妹を気遣ってくれてもいいんじゃないだろうか。
また朝から洗面台を占領してるのは悪いと思うけどさ、兄さんは部活で汗だくになって終わりでしょ?別にいいじゃん。
とは思いつつも、ちゃんとどいてあげる。実際もう終わってるから。
「兄さん、ヘンじゃない?」
シャコシャコと歯を磨く兄さんの前で、くるりと一回転する。
ていうかすっげー眠たそう。
「藍、どっか行くんだ。どこ?」
「ヘンかどうか訊いてるんだけど」
「あ、そっか。岡崎とデート?」
「ねぇ聞いてよ」
相変わらずマイペースだね。
兄さんに訊いた私が馬鹿だったんだ。
「うん、そうだよ」
とりあえず兄さんの問いには答えておく。
「やっぱり。ラブラブー」
「棒読みで言われても」
第一、ラブラブになんかならないしね。
どうせ私ばっか意識してんだもん。
「今日だっけ。あれ」
「どれ」
「あれだって、アレ…岡崎の誕生日!」
「ボケてんじゃないの」
誕生日がでてこないって…重症じゃん。
はぁ、と呆れて溜息をついた時、
ピーンポーン
「え、もう来た!?」
あれ、早くない?
「早く出てやれー」
「解ってるよ!」
兄さんに急かされて、荷物を引っ掴んでドアを開けた。
「どうもー。宅急便でーす」
「…どうも」
―恥ずかしい!!