あなた日和

□思わぬ邪魔モノ
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「とうちゃーく」


キキッとブレーキをかければ、タイヤが踏ん張って止まる。
俺ん家の前。

藍は荷台から降りると、俺ん家を何も言わずに見上げた。
フツーの家だと思うんだけど、藍ん家とそう変わらないと思うし。


「…入らないの?」

「え、入るよ!お邪魔します!」


少し藍はどぎまぎしながら、家の中に足を踏み入れた。

なんか、さ……もしかして緊張してる?









episode 16









「適当に座ってー」


料理するんだからと、とりあえずリビングに通した。
藍が椅子に座ったのを見て、俺はキッチンに行って冷蔵庫から今朝買ったジュースを出す。


「ブドウとオレンジ、どっちがいい?」

「イヤお構いなく…」


手を横に振る藍は、やっぱり少し様子が違うように見える。


「…藍、今日なんか変だよ?」


有無を言わさずとりあえずオレンジジュースを手渡して、向かいの席に腰を下ろす。
藍は、照れくさそうに視線を落とした。


「…そう、かな…」

「うん」

「でもほら…男子の家行ったら普通緊張するでしょ。私初めてだし…」


あ、やっぱり緊張してたんだ。
普通緊張するのかどうかは男の俺には解らないけど…え、初めて?


「うそ、お前男子ん家行ったことないの?高1にして!?」

「うっ、うるさいな!行ったことないよ!悪い!?」

「悪くはないけど…ガキん時遊びに行ったりさぁ…なかったの?」

「言ったじゃん。イジメられてたんだよ」


拗ねたようにほっぺたなんか膨らませちゃって。
可愛すぎるとか思う俺は変態か。

ていうか、今俺悪いこと言ったな…
いじめとかいい思い出な訳ないのに。


「ごめん…」


素直に謝れば、当の本人はきょとんとして、


「何が?」

「え、だから今俺…」

「あぁ、いいって。昔の話じゃん」


ははっと笑ってすら見せた。

なんていうか、時々思うんだけど。
藍って自分の扱いが粗いっていうか、あんまり自分の事に関心がないっていうか…

俺の思い過しならいいんだけどさ。
 
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