あなた日和

□お誘い
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「あ」

「げ」


体育館に行く途中で、A子とはち合わせた。
そんなに嫌なのかな…









episode 19









廊下ではち合わせたA子は、それはそれは嫌そうに眉を寄せて。
でも仕方なさそうに一緒に体育館の方へ歩く。


「A子も岡崎観に行くの?」

「そうだよ。悪い?」


少し苛立ったようなその声に、私は首を振る。


「ううん、全然。いいことなんじゃないの?」

「はぁ?」

「なに?」


A子は、あからさまに理解できないって顔をする。
なんでそんな顔…


「あんた、岡崎の彼女でしょ?そこは普通怒ったりするとこでしょ!」

「なんで怒んの?」


私は普通に疑問をぶつけただけなのに。
A子は痛そうに頭をおさえた。


「だって、A子は岡崎が好きなのに見るなっていう方が無茶でしょ。普通の彼女はそう言うの?」

「言うよ。自分の彼氏に色目使われていいわけないじゃん」

「そうだけど…」


A子の言う事はよく解る。

私だって、あんなにたくさんの娘が岡崎を好きで、岡崎を見てるのは嫌だ。
でも、それが岡崎なんだからしょうがないんだよ。

私がどんなに嫌でも、我慢するしかないんだ。

だって、私は岡崎とはなんにもないんだから…


「私は、言わないよ」

「…ふぅん」


ほんと、あんたって変わってる。

最後にそう言われて、私は苦笑するしかなかった。


どんなに私が想っても
どんなに私が焦がれても
どんあに私が求めても

全ては私の一方通行。


岡崎は、どうだろう?


岡崎は好きな人とどうなんだろう。

仲いいのかな?
だったら私と付き合ったりしないよね?
もしかして、私みたいな恋なのかな?

岡崎には、私みたいな失恋してほしくないな。
できれば真紀達みたいな、幸せな恋をしてほしい。


そう思ってる。
そう思ってるのに、この関係を断ち切らないのは、


――私の自己満足。
 
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