あなた日和

□兄貴の心情
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試合が始まった。
バスケのことはよく解らないけど、次々にゴールが決まっていく。
どっちかが1点取るとすぐに取り返して、岡崎達も兄さん達も譲らない。

ただ解るのは、二人とも凄いってことだけ。









episode 21









あっという間に第3クォーターが終わってしまった。
みんなすごい汗。ベンチの溝口ですら汗をかいてる。

確か、岡崎のポジションはとにかくゴールを決めて点を取りに行く感じ。よくは知らないけど。
それで兄さんがポイントガードとかで、昔司令塔みたいなもんって言ってた気がする。


「ねぇ」


隣でとくに喋らずに試合を観てたA子が、不意に声を発した。
私はA子の方を見遣る。


「あんた、どっち応援してんの?」

「岡崎」

「即答なわけ」


はぁ、と何故か呆れたような溜息をつかれた。


「…ご不満ですか。ドストライクの夏海さんを応援してないと」

「あんたが応援しまいが夏海さんは勝つに決まってるでしょ」


今度は鼻で笑われた。悔しい!


「ただ、簡単に兄を捨てる薄情な妹も居たもんだと思っただけ」

「別に捨ててないし。…簡単じゃないし」


話してる間に、第4クォーターが始まる。


簡単じゃない。
兄さんにも勝ってほしい。きっとこれが、高校最後の試合だから。

でも私、試合中も休憩中も
気づいたら岡崎しか見てないもん。

そんなのもう、決まってるじゃん。


目まぐるしく動く岡崎。
岡崎は私にないものをたくさん持っていて、ただ純粋に憧れる。
それだけなら、よかったのに。
岡崎はそれを私にいつもわけてくれる。


こんなに満たされたような気持ちは、初めてなんだ。


「岡崎…頑張れ」


別に勝たなくてもいい。
ただ本気でぶつかって、一生懸命好きなことをして。
誰よりも君に笑っていてほしい。

 
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