長編


□一本の電話
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『運命とは決められたものではない。
自分で進むものだ。』


そんな事を前に読んだ気がした。

運命なんてものは私にはあるのだろうか。

運命なんてものは私には存在していなかったのだ。

ならば何故、私は生きているのだろうか……?

決められた運命さえ与えられず、自分で運命などは決められない。
私の今の運命は、私の一族を滅ぼした幻影旅団にさだめられた。
あんな奴らに運命を決められるなんて思ってもいなかった。

だけど、そのお陰なのかは解らない。
だがあんな過去がなければ私はキルアとは出逢えなかった。

キルアを愛し、愛し焦がれた。
キルアの一言で、私の世界は一変する程まで愛してしまった。
私はもう、キルア以外を愛せない。



キルアの帰りを待ち続けてやっと……帰ってきた。

私たちに平穏が訪れた訳じゃない。

それでも嬉しかった。
私の隣にこの温もりがあることを待ち望んでいた。

余程疲れていたのか、キルアは私の隣で私に寄りかかりつつ静かな寝息を立てて眠っている。

まだあどけないこの少年が私を求めて離さない。

多分私は今までにないくらいの表情で笑っているのだろう。
自分でもそれが解った。
キルアの髪を撫でようと腕を伸ばした所でテーブルに置いていた携帯が震えた。

表示を見れば見知らぬ番号。
仕事の依頼人からかと思いつつも恐る恐る応答する。


「はい。」

『…………。』

「もしもし?」

『……オレだ。解るか?』

「っ!!!…クロロ……ルシルフル…」





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