Anniversary
□ずっと一緒にいられるから、
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街一色がバレンタインで浮き足だっているというのに、俺の心は全然晴れない。
いまだに闇に包まれて、この闇から俺は抜け出せない。
いや、抜け出したくないんだ。
この現実を解ってしまったら、俺は俺じゃなくなってしまう。
バレンタインという日を楽しむ人々を横目に俺は、雪で白くなった道に足跡を残しながらただ、歩く。
行く場所なんて決めてない。
そんなもの、俺には必要がない。
ただ脚が向くままの場所に行って、すぐに別の場所へ行く。
それの繰り返し、繰り返し………。
灰色の厚い雲が空を覆い、薄暗かった辺りはいつの間にか真っ暗だ。
降り続ける雪、やまない讃美歌、光り輝くイルミネーション。
辺りは明るいはずなのに、どうして暗いんだろう……、
街をただふらふらと歩き続ける零の目の前に、自分と瓜二つの顔が現れた。
「いち、る………?」
一年前に死別し、今尚零の中にいる愛しい愛しい双子の片割れ。
やっと、逢えた。
逢いたくて逢いたくて、待ち焦がれていた愛しい片割れ。
でも手を伸ばせば片割れは消えた。
「いちるっ……!」
人目も気にせず、その場に崩れ落ちる。
積もっていた雪が零の服を濡らしていく。
でもそんなものは今の零には届かない。
逢いたかった片割れが幻で、すぐに消えてしまったのだから、
泣きたい気持ちを抑えて、座り込んだまま無気力に空を仰ぐ。
「……いちる、」
名前を呼んでも現れない。
その温もりを確かめたいのに、確かめれない。
壱縷、逢いたいよ……。
「零っ、!」
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