Anniversary

□巡り巡る、愛。
1ページ/4ページ




月日は巡る。

巡り巡って、幾年が経った。

何年なのか、何十年なのか、何百年なのか、何千年なのか。

それはけして私たちには解らない事だけれども、幾千の別れの先には、邂逅が待っている。




前世で約束をした。

――――来世でも、巡り逢えるから、その時もまた、愛し逢おうと。


記憶も、想い出も、今の私には貴方の名残すらも思い出せないけれど、何故だかいきなり恋しくなる。

私は誰を待っているのか。

私はどうして待っているのか。


名前すら知らないあの人を、心の奥底で待った。






クルタ族という一族は滅びている。

クルタ族とは茶色に近い瞳を持ち、気持ちが昂ると瞳の色が緋色に変わる一族。

それなのに、何故か私の瞳もクルタ族と同じだった。

両親はクルタ族の末裔でも、親戚ですらもないと言うのにどうして、私だけが……?




―――――綺麗だ。



誰かの声が、響く。

凛とした声で、まだ子供らしさの抜けない声音。

遠い昔、誰かがこの緋色を誉めていてくれた。


それは、誰――…?


考え事をしながら歩いていると桜並樹の道へ出ていた。

咲いたばかりの桜が舞い、風に翔ばされ消えていく。

儚く散りゆく桜の花。



―――――儚いね。



また、響く。

貴方は一体誰なんだ?

名さえ知らない貴方は今も私を待っているのか?


幾千もの桜の花が舞い、私の視界を桃色に埋め尽くす。

ひらひらと舞う花びらが、いきなり吹いた強い風のせいで強い小さな刀のように吹き荒れる。

反射的に眼を閉じた。




「クラピカ……、」



また、響く。




「クラピカ、。」



また、響いた。



風も弱まりうっすらと瞼を開ける。

視界には、桜。
そして、銀。

ひらひらと舞う桜の中に、柔らかな銀が混じっている。


「クラピカ。」


愛しそうに私の名を呼ぶ、


「やっと…逢えた。」


その唇は、その声は、私を惹き付ける。


――やっと、逢えた。

貴方はそういう。

それでも私には貴方の名さえ解らない。


「あ、れ…?どうして…。」





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ