Anniversary

□再会の日まで
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 君に逢える日だけをずっとずっと、楽しみにしてる。

 声だけでなんて足りない。

 今すぐにでも君に、逢いたい。




―――再会のまで





――七夕って知ってる?
トリックタワーの一つの関門でのミスにより、50時間を過ごさねばならないというペナルティをただクラピカは本を読むことで消費していた。
だが唐突に、キルアの唇から紡がれた言葉に、いつものようにクラピカは即座に言葉を返す事が出来なかった。

それでも一瞬、思考を巡らせる時間さえあればキルアの問いかけにクラピカが答えを導く事は容易だった。


「それは知っているが、どうしてだ?」

「ん?いや、なんかいきなり七夕って行事があったなぁ、って思い出しちゃって…」

「それよりも私は七夕というモノをお前が知っている事の方が驚きなのだよ」


アレはジャポンの風習だろう?、と読んでいた本に視線を再び落としながら言うクラピカに、キルアはほんの少し、しっかりと眼を凝らし瞬きせずに見ていないと見落としてしまいそうな程の一瞬に顔をしかめた。クラピカの顔と本の間に顔を覗き込ませるようにして入れると、クラピカの琥珀色の大きな瞳が零れ落ちてしまうんじゃないかという位に見開かれる。
キルアの顔にぶつからないようにと、本を立てれるようにと折っていた膝を伸ばすと、同時にキルアの顔も視界からいなくなり、微かに映る銀髪を視線で追い掛けると、にんまりと笑っていた。


「なんでだったかなー。多分誰かに教えられたのかも」

「ハンゾーではないのか?ハンゾーはおしゃべりだから一方的に教えられたかと、」

「あぁ、アイツジャポンだったね。でもハンゾーからは教えて貰ってないよ?」


考えるような素振りで、顎に指を絡ませるキルアの視線の先は開きっぱなしになっているクラピカの膝の上の本に向けられている。
その視線が何を意味するのかぐらい、まだこの子供にしては大人びている子供と付き合いの短いクラピカでも解りきっていた。


ふぅ、と小さく溜め息を零し、栞代わりに使っていた紙切れを挟みパタン、と本を閉じ脇に置くとしっかりとキルアを正面に胡座をかくようにして向き直した。
それに満足したのか、クラピカだけに解るように向けられていたキルアの突き刺さるような視線も和らぎ、ストン、と腰を降ろしクラピカと向き合うようにして胡座をかいている。

それに、と次に紡がれる言葉を待つクラピカにたった一つの小さな疑問が浮かび上がる。
それは本当にクラピカにとっては至極小さな事で、その時は聴かずにおこうとしまい込み、続くキルアの言葉を聴いていた。


「なぁ、アンタ誕生日いつ?」

「は?」

「だーかーらぁ!誕生日、クラピカ誕生日いつなの?」

「あ、あぁ…私は4月だが…」

「何日?」

「…4日」


二人の話していた会話とはなんの脈絡もなく唐突に誕生日を聴かれ、問い掛けられるままに答えるとキルアは満足したのか、それ以上はクラピカに話し掛ける事のないまま、元居た自分の場所へと戻るとすぐに布団を被り眠りに着いていた。

その言葉が何故なのか、といつも無意識の内に考えていた筈の思考はこの時は何故か消え去り、クラピカも再び本を読むことはせずに横になると、膝下に掛けていた布団を肩ほどまで引き寄せ眠りに着いた。



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