Anniversary

□君のくれた物語
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私を見てほしいと願うのは初めてで、そんな事を思うのも初めてで、この想いを抱くなんて、想像すらしていなかった。

貴方に好きと言う勇気すら私にはなくて、貴方を手に入れる為のリスクを背負うよりも、貴方を失うかもしれないという事実の方が、怖かった。

貴方を失う勇気も、隣にいる為の一歩を踏み出す勇気も臆病で弱虫な私にはなかった。


だから、私は今日も…__






−−−−−君のくれた物語







幾つものライトに照らされ、指示されるがままポーズを取り、笑顔とはかけ離れてはいるがその場にいる人全てが息をするのすら忘れたかのようにして魅入るモデルは肩にかからない程度に伸ばされた金髪はライトの光に反射してキラキラと輝いていた。


「今日はもう終わり」


何度かシャッターを切り、写真を確認して放ったその一言にスタジオにいる全ての人が驚いていた。予定の時間より早すぎるのだ。
幾つものライトを当てられ中央に佇む一人も例外ではなく、カメラのセットされた場所にいるカメラマンだけが淡々と片付けを進めている。


「え、キルアさん一体何を…?」

「言ったでしょ、今日は終わり」

「終わり、って…スケジュール結構押してますよ?」

「いいよ別に。……今日はもう上がる」


その場にいたアシスタントが抗議の声を上げる中、機材の片付けを終えたキルアは荷物を持つとクラピカを一瞥する事無くスタジオから出て行ってしまう。
なんとも言えない雰囲気の中、クラピカはただ呆然とし、その場から動く事も出来ずにいた。


ーー終わり…?どうして…?


ただぐるぐると脳に焼き付いたように木霊すあの言葉が忘れられずにぺたりとその場に膝を付いて座り込んでしまった。


「クラピカ、とりあえず戻ろう?」

「………」


近くに来て声を掛けてくれているマネージャーの声すら届いていないのか、クラピカは無言で食指すらも動かせずに、マネージャーの為すがまに立ち上がり、ふらふらと支えられながら歩いた。


「駄目、だった…?」

「キルアさんが言った事は気にしなくていい。とりあえず今日はオフにするからゆっくり休んで…」


「なんで…?」

「なんで、ってその様子じゃ無理でしょ?」

「っ!!」


マネージャーの言葉などは耳に入っていなかったクラピカらなんの脈絡もない言葉を紡ぎ、驚きながらも返事を返したマネージャーの支えてくれていた腕を振り払うかのようにして走り出した。


「キルア!…さん」

「ん?」

「終わり、って、なんだっ…、は、私は、何か…」


クラピカはキルア後ろ姿を目視するといつものクラピカからは考えもつかない、敬語を使う事すらも忘れ大声を張り、肩で息をしていた。


「終わりって言ったら終わり。それだけだよ」

「でもっ、」

「なんでかは次の撮影の時までに考えてきなよ、オレからの宿題」


そう言い、ひらひらと手を振りながらキルアはクラピカに背を向け、出口まで歩いて行ってしまった。
理由も聴かされないまま撮影を無理矢理終わらせられ、何が何なのか理解しようにも頭は付いていかず、追ってきたマネージャーにずるずると連れて行かれ、クラピカも次の仕事へと向かった。





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