〜風の速さで走り抜ける〜

□第1走目
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日が落ち、あたりは暗くなっていた。

季節のせいもあるふだろう。

そんな時間帯にあたりには誰もいない。

そんななか、バスケットゴールの下には二人の影が伸びている。

「はぁ〜。」

大きく深い溜息をついたのは誠凛高校の男子用の制服を着ていた。

顔はとても中世的な顔立ちをしているが、服装と身長的に見れば青年だろう。

その青年の手にはバスケットボールがあった。

その隣には、制服の青年よりも長身の誠凛高校のジャージを着ている青年が立っている。

「やっぱ、カントクの目はごまかせないってとこか。」

隣の青年は黙って頷く。

「はぁ〜。もう治ったと思ってのになぁー。」

今日何回目かもうわからない溜息を吐いた。

隣の青年はまあまあ。と言うような手の仕草をする。

「最近、凛之助達が羨ましいよ。」

「・・・。」

ジャージを着ている青年―凛之助と呼ばれた青年は無言だった。

「え?怪我を治すのが優先だからしょうがないって?」

青年は何も言ってはいないがと制服の青年には伝わるようだ。

凛之助は黙って頷く。

「凛之助までカントクや日向みたいなこと言わないでくれよー。」

項垂れながら制服の青年は言った。

「ん?」

「?」

凛之助は制服の青年に向かってどうかしたのかと言った様な表情を向ける。

「ねぇ、あの人ってさ。カントクが言ってた火神?」

制服の青年は歩道を歩いている誠凛のジャージを着た青年を指差した。

その青年の髪は赤かったためよく目立つ。

凛之助は黙って頷く。

すると、制服の青年は口角を釣り上げる。

「凛之助。この先のコンビニまで先に行っててくれないか?」

「・・・。」

「何するのって、・・・後で教えるよ。」

青年は凛之助が見えなくなったのを確認してから歩き始める。

制服の青年は先ほど自分が指差した青年ー火神に向かって手に持っていたバスケットボールを投げた。

「危なーい!」

「!?」

火神はその声に反応し、そのボールを受け止めた。

制服の青年は火神に近づいていく。




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