〜風の速さで走り抜ける〜

□第1走目
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青年は火神に話しかけた。

「ごめん。大丈夫?」

「あ、あぁ。このボールあんたの・・・です、か・・・?」

途中から不自然な敬語になっている。

おそらく、青年の服装を見てんのことだろう。

誠凛高校は去年できたばかりの新設校だ。

それ故に、今は1、2年しかいない。

それに火神は青年に見慣れていなかったのだろう。

つまり、自分より先輩だと判断したのだ。

「そ。とってくれてサンキュ。」

「い、いえ。」

「バスケ部?」

「え?あ、そうだ・・・です。」

火神という青年は敬語には相当不慣れのようだ。

「なんでわかった、んですか?」

「身長高いし、体格いいし。俺の友達がバスケ部なんだ。」

「はぁ。」

「ねぇ、暇なら俺1対1しないか?」

「は?」

火神は戸惑った。

青年の言い方では青年はバスケ部ではないと火神が認識したからだ。

バスケ部の自分に1対1をバスケ部以外の人間が挑んでくることなどまずない。

「1回でいい。無理ならいいけど。」

「分か・・・りました。」

火神は断る理由もないので、承諾することにした。

「じゃ、さっそくやろうか。」

青年は火神に背中を向け、バスケットコートに向かって歩いていく。



「僕が攻めるから、君は守ってね。」

「おう、・・・はい。」

「行くよ。」

青年は地面を蹴った。



「!!?」



ガシャンッ

火神は勢いよく自分の後ろを振り返った。

揺れるゴールネットの下に転がるバスケットボール。

ゴールのリングにはさっきの青年がぶら下がっている。

青年はリングから手を放すと綺麗に地面に着地した。

そこで火神は気が付いた。

自分が1対1で抜かれたのだと。

しかも、相手は制服という動きにくい格好の上、バスケ部ではない。

青年は笑顔だった。

「あんた・・・何者だ。」

「俺?俺は見ての通り誠凛の生徒だ。いつか、また会うことになるよーーー火神君。」

「!?」


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