short story

□Is it Valentine?(カイリン)
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「うう…」

私は手で持っているラッピングされた箱を見て涙腺を緩ませた。
今日はバレンタインデー。女の子が好きな男の子にチョコレートを渡す日。私もその一人で今日大好きな一つ上の先輩に渡すつもりだった。だけどやっぱり先輩には彼女がいるらしく先輩が幸せそうな顔をしていたから諦めてしまった。というか私が内気なの。やっぱり友人に言われた通り、少しだけ勇気出せば良かった。
そんな事を教室の隅っこの地べたで体育座りをしながら考えてかれこれ二時間。帰りたくても帰る気はなくてずっと溜息を繰り返した。
でも帰らなくちゃな、と思った私は立ち上がると床に無造作に置いていた鞄を手に取って教室から出ようとした。だけどその時私が出る方とは別のドアが勢い良く開いたと同時にバサバサと雪崩のように物が落ちる音がした。

「ああ…やっちゃった…」

私はその声を聞いてそっちを向くと大量のノートを床にばら撒いたのか一冊ずつ広いあげていく人がいた。先生じゃない、今朝紹介された教育実習生の人だ…名前はなんだっけ…。私はいつの間にか名前も忘れた人のノート拾いを手伝っていた。

「あ、あの、大丈夫ですか…?」
「…これが大丈夫に見えますか?」
「すすすすすいません…大丈夫じゃないですよね…」
「はは!冗談だよ冗談!」

私は咄嗟に俯いて謝ったけど教育実習生の人は笑いながら私が拾ったノートをひょいと受け取るとありがとうと言った。
薄暗くなってきている為グラウンドのライトが付き始めたのが教室からでも分かった。教育実習生の人はさっきまで暗くて顔まではあまり見れなかったけどライトが付いたので黒い色だと思っていた髪は青い髪だと分かった。地毛っぽいので私はその髪が珍しいと感じてしまいまじまじと見てしまった。私も自分の事言えないけど。

「ん?なんか顔についてる?」
「い、いえ…そんな事ないです…」
「そっか、ところで君ここに残ってどうした?」

ふと笑顔でそう聞かれて私は今までの事を思い出して顔が熱くなった。その人はキョトンとしてたけど

「ハッハーまさか今日好きな男の子にチョコ渡せなかったとか?」

見事に図星を突かれて私はどんどん気持ちが沈んでいった。その人は最初面白がって図星か、図星だな、とからかって来たけど私の沈み様に気付いて口を閉じていた。

「そっかー、どうやって振られたの?言いたくないからいいけど」

その人が聞いて来たので私は重い口を開けた。
「私の好きな人には彼女さんがいたんです…渡したら何か変わるのは分かってたんですけど内気過ぎて…、ひっくでも好きだからうっ渡したかったです…」

どうして初めて話をする相手に泣きながらそんな事話さなきゃいけないんだろう。私は涙をグイッと腕で拭うとすいませんとまた謝った。すると

「健気でいいなあ、オレなんか好き過ぎて好きな人追っかけ回して変態扱いされたよ?バレンタインも逆チョコしました」
「でも、その人には気持ち伝わったんですか?」
「ううん、逆にストーカー扱いされて殴られたよ」
「ですよね…」
「酷いなぁ」

その人は顔を恥ずかしそうに真っ赤にした。本当に好きだったんだなと思った。するとその人のお腹からグウッと音が鳴った。

「お腹空いてるんですか?」
「あ、ああ、忙しくて昼なにも食べてなくて」
「あの!よろしかったらこれ食べてください…」
私は鞄からさっき渡し損ねて使い物にならなくなった綺麗にラッピングされたチョコレートの箱を取り出してその人の前に出した。

「…これ君の本命チョコじゃないの?」
「もういいんです!家帰って自分一人で食べるくらいなら他の人に渡した方がいいです…」
私はハッとした。今更ながら失礼な言い方をしたと思った。でも本音なんだから仕方がない。私は恐る恐るその人を見るととっても嬉しそうな顔をしていた。

「オレなんかに当たってくれて嬉しいよ、ありがたく受け取ります」
「は、はい…すいません」

その人はそう言いながらチョコレートを受け取ってくれた。私は何故か冷や汗をかいていた。変に緊張してしまったんだ。そしてまた俯いた。

「俺好きだな…」
「うえっ⁉」

いきなりその人の口から好きと言う単語が出てきたので私は一瞬期待してしまったけどその人はチョコを見て笑顔だったので把握した。少し残念だと思ってしまったのはないしょ。

「さあそろそろオレも職員室に戻らなくちゃ、君も早く帰るんだよ…鏡音さん」
「へっ?」

名前を呼ばれた途端私は俯いた顔をすぐに上げた。今日の朝、みんなで自己紹介はしたけどいきなり覚えらるはずはないから。私もその人の名前覚えてないのに。

「よく私の事覚えられたしたね…」
「まあ珍しい名前だからね!あと…なんか好きだった人に似てるからかな?」

その人にそう言われて私は何度めか分からないけどまた顔を熱くさせた。
その人はポンポンと私の頭を撫でるとニッコリ笑って鼻歌を歌いながら教室を出て行った。
うう…心臓が痛いよ…。ドキドキするよ…。
私は撫でられた頭に手を乗せるとその人の事を思い出して顔が沸騰したかのように熱くなった。


そして学校を出てからも家に帰って来てからもその人の事ばかり考えてしまって夜も寝れませんでした。



次の日その人の名前を知って、勢い余って名前を呼んで恥ずかしくなる出来事はまた別のお話。





終わり






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バレンタインから恋が始まるお話書き始めたらこんな話に変わっていました。でも一度でいいからカイリンでバレンタインネタ書きたかったので悔いはありません!
そしてクリプトンカイトハッピーバースデー!君が好きだ!リンちゃんといちゃついているカイトが好きだ!←
ちゃんとしたお祝いはヤマハカイトの誕生日に祝いたいと思います。

では読んでくださりありがとうございました!

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