short story

□レンプラス!
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ROUND2

「さあ来い!」
と私はバッと両腕を広げたけどレンはちらっと見てきただけで誰も来なかった。
「なんで来ないの!?」
「リンの色気が足りなグオッ」
私は小さいレンを握りしめながらどうしてリン廃な彼らが来ないんだろうと思ったけど後ろから何か視線を感じた…というか一瞬寒気がした。私は恐る恐る後ろを見ると微笑んだレンがいた。
「あの…どうして私を見てるの?」
「なんでってリンが困ってるから…どうして…どうしてそんな事聞いてくるの?」
レンがそう言いながらゆっくりと私との距離を縮ませて来た。私はよからねオーラを何故か感知して後ずさった。
「あの…なんか怖いんですけど…」
「ふふ…リンって面白い事言うね、僕の事怖いだなんて」
とかなんとかレンは言ってるけど…目だけ笑ってないんですけど。レンは口元だけ上にあげているだけで全く笑っている感じとは思えなかった。
というかそんな事を考えている内にレンとの距離は目と鼻の先にあって、ぶつかるんじゃないかくらい近かった。思わず固まってしまった私にレンはぎゅっと抱きしめてきた。嫌に優しく。
「ねえリン、リンは僕以外の人思ってたりしてないよね?」
「えっ…いきなり何言って…」
「質問に答えられないの?…少し痛い目に合わないとダメみたいだね」
いやいや!全く状況把握が出来てないだけですけど!と言おうとしたら優しく抱きしめていたレンの腕がいきなり強くなった。もの凄くギリギリと抱きしめられて痛い。まさかこれが噂のヤンデレン…。
怖すぎて私はずっと手で握りしめていたレンをヤンデレンに投げ飛ばそうとしたその時
「ねえリンちゃんが困ってるよー?離してあげたらー?」
「は?」
甘ったらしい声が聞こえたのでヤンデレンと私がそっちを向くとニコニコと笑いながら両手を振っているレンがいた。
「なんなの君、邪魔しないでくれない?」
「まあまあそんな固い顔しないでよ、というかリンちゃんはみんなのリンちゃんだよー?」
さっきまで心から笑っていない笑顔を振舞っていたヤンデレンだったけどヘラヘラしているレンに対しては冷たい無表情で睨みつけていた。するとヘラヘラしていたレンは私の後ろから抱きついて来た。そして私の背中にスリスリと顔をこすって来た。これはデレン…
「へへ、リンちゃん今日も可愛いねー」
「あ、ありがとう…でもあんまりスリスリするのはどうかと思…痛っ」
デレンと話しているとヤンデレンの抱きしめている腕の力の強さがさっきにも増して強くなった。しかもデレンにも抱きしめられている。私は痛さに耐えきれず口を開いた。
「ねえ…二人とも一回離れてほしいな…骨が折れそうで…」
「別に折れてもいいよ?そしたらリンは僕のものになるじゃん」
「何言ってるのー?リンちゃんが骨折れそうって言ってるんだから離してあげなよー」
「君が離れろ」
全く話を聞いてくれていない。私はずっと握りしめていたレンを見ると、握りしめすぎたのか白目を向いて気を失っていた。私は急いで二人から藻掻いて離れるとレンを持っていた手をすぐにパッと広げてハムスターを手に乗せるようにレンを持った。
「レン!レン!大丈夫!?」
「うがが…」
「レンしっかりして!」
私が何度も呼んでもレンは目を覚まさなかった。まだ全部データ集めてないのに…レンはいつも以上に小さい身体で死んじゃうんじゃないかと思うと私は思わず涙を流していた。バラバラになったデータでレンはまだ残ってるけどレンがいなかったらつまらないよ…
グズグズと泣いていると誰かに肩を支えられた。
「リンたん泣かないで…オレは泣いてるリンたんに死ぬほど萌えるんだけど笑顔のリンたんは本当に幸せそうで鼻血が出るくらい萌える…だから笑ったリンたんを写真に収めたいよ…」
なんだかよく分からない発言をするレンに私は泣いて突っ込む気もなくなりただ変なレンに寄り添う事しか出来なかった。
「リンたん元気出して…ああリンたんいい匂いするね、クンクン…」
「グスッ…うう…キモい」
私はだんだんと泣き止んでくるとこのレンはめちゃくちゃキモいなと感じた。でも温かい。やっぱりデータだからいつものレンの温もりがあるんだな、と思った。そんな時
「ねえキモレンくん、かわいいリンちゃんから離れてくれないー?」
「リンに気安く触らないでくれる?殺されたいの?」
後ろからデレンとヤンデレンの声が聞こえた。そして空いてる場所から抱き付いてきた。また強い力で抱き付かれて痛さで泣きそうになった。
「おいこらリンたんに抱き付いていいのはオレだけだぞ!?ところでリンたん今日のブラは何色ですか?」
「キモレンくん、ちょっとリンちゃんの胸触るのやめようかー」
「二人ともそんなに僕とリンの邪魔して楽しいの…?いい度胸だね」
三人に密着されて私は限界だった。そんなにギュッてしなくてもあなた達の気持ちは分かるから…お願いだから離れて!
すると私の願いが天に届いたのか三人のレンが光に変わっていった。私は苦しみに解放されると少し噎せた。そして光は今目覚めたのか息が荒くも必死に立っているレンに向かっていった。
「『鏡音レン』のデータ処理完了…三体確保…」
「レン大丈夫!?」
私は顔色が悪いレンを手のひらで支えるとレンにそう尋ねた。
「うん、リンの泣きそうな声が聞こえたから頑張らなくちゃって思ったから」
私はレンの真剣な顔を見てまた泣きそうになったけど、これ以上レンに迷惑をかけちゃいけないと思って耐えた。ところで…
「ねえこれでレンのデータ全部集まったのにレンが戻ってないよ?」
「確かに…やっぱりマスターに騙されたのかな…」
そう、レンのデータは全て揃っているはずなのにレンは小さいままだ。私がまた何かしたのかなと思ってしまいまた涙腺が崩壊しかけると

「…ハハッ」

誰かの笑い声がした。
私とレンは同時に振り向くと部屋の片隅に体育座りをしてポツンと『レン』がいた。
「あ…もう1人いたね…」
「忘れてたな…」
とお互い苦笑いしながら言っているとブツブツともう一人のレンから聞こえてきた。
「まあオレって目立ち過ぎて目立ちにくいですしー?リンはオレに見とれ過ぎてオレに気付かないのよく分かるわー!こんなに思われ過ぎてどうしようとか思ってるとオレも嬉しいわー!あー楽しい!楽し過ぎて涙出てきたーオレなんて幸せなん」
「『鏡音レン』最後のデータ確保」
レンが触れた事でもう一人のレンは吸い込まれていった。


その後、マスターに最終データ処理をしてもらい、無事にレンは元の大きさに戻り、一安心するのだった。


「ふー元に戻った」
「良かったね元に戻って!」
思いっきり背伸びをしたレンに私はそう言うといきなりレンは私に抱き付いてきた。私はそれに困惑している間にレンはすぐに私をパッと離した。
「ん?どうしたの…って顔真っ赤!」
「うるせー…」
レンは腕で顔を隠しているつもりだったけど耳まで真っ赤だった為隠していても顔が真っ赤なんだなと分かった。だけど私にはどうしてレンが顔を真っ赤にしているか分からなかった。
「ねえなんで顔真っ赤なの?」
「…教えない」
「ねえレン、ねえ」
「だああああ!うるさい!」
とレンに怒鳴られたて私は体をビクッとさせたと同時にまたギュッとレンに抱き締められた。
「ううう羨ましかったんだよ…!普通にさ、抱き締められてさ、あいつら…」
「…えへへ、レンがこうしてくれて嬉しいな」
「はいはい」
私もレンの背中に腕を回した。久しぶりにこうしてくれて私は今日の苦労が吹っ飛ぶくらいに嬉しかった。いつも恥ずかしがって私が抱き付いてもレンはやり返して来ないんだもん。
「ププッレンって『ヘタレン』だよね」
「…知ってるよ」
今日は色んな『鏡音レン』に抱き締められて来たけどいつものレンが安心する。やっぱりいつものレンが大好き。
「さあ、早くみんなの所に行こうぜ?」
「うん!」
お互い離れるとなんの前触れもなく手を繋いで、共通フォルダにいるみんなの元に向かうのだった。





皆さんは理想の『鏡音レン』は見つかりましたか?
えっ?いなかった?
じゃあまたいつかあなたの元にも理想の『鏡音レン』が訪れる事を祈っています。

合言葉は『レンプラス』!




終わり
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