Book

□第一章
1ページ/6ページ

白い、白い。

何も無い訳ではない、しかしベッドや椅子、本棚やぬいぐるみ…そこにある全てのものが真っ白で、影が存在を主張することを許されないかのような純白さ。

そんな部屋の主かと思われる少女は、ゆったりと椅子に腰掛けて、部屋と同じく雪のような指で手にある本のページを捲った。

光によって浮かびあがる、針金のような白髪。ふと見開かれたその目は血と暗闇のオッドアイ。
美しさに天使かと見紛うが、フリルのあしらわれたドレスの、グリグリと蠢く数多の眼球がそれを否定していた。
少女は、端正な顔を笑みへと歪ませる。右目と同じ、真っ赤な唇で小さく呟いた。


「さぁ、楽しい『物語』の」


始まり始まり――――。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ