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□第二章
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小人たちの陽気で、かつ耳障りな歌声を聴きながら、ナンバー5は森の中を進んでいた。
さあご一緒に、とコーラスを誘ってくる小人たちにはひきつった笑顔で応対し、遠回しな拒絶を告げる。
着慣れないドレスが鬱陶しく、それでいて歩きづらかった。何度かスカートを踏んでしまいそうになりながらも、彼女は小人たちに着いていく。

「さあついた!」
小人がそう言ったのは、歩き出してから十分ほど経ったあとだった。
ようやくか、とナンバー5は安堵の溜息をつき、彼らの家とやらを見つめる。

それは木で出来た、住人に合わせたような小さな家だった。木々の間から降り注ぐ木漏れ日を浴びて、森の一部として溶け込んでいる。
ひょっとして、ツリーハウスもこんな森の中にあれば目立たないのかもしれない、と思った。
そんなナンバー5をよそに、小人たちは意気揚々とその家に向かっていく。

「さあお嬢さん、おいで!」

誘われるがままに、ナンバー5も同行した。


家の中の家具も、ほとんどが木で出来ていた。
木漏れ日は窓から入ってきているようで、家の中はとても明るい。
テーブルには大きなナプキンが敷かれ、丸みを帯びた七つの椅子がそのテーブルを囲んでいる。

まるで絵本から飛び出してきたような光景だな、とナンバー5は笑う。
それから、絵本、という言葉に引っかかった。
そうだ、さっきもこの現状に既視感を覚えた。
絵本と関連した何かか? ふと脳内に、何かがよぎった。
が、その考え事もすぐに中断させられた。勿論、邪魔したのは小人たちである。

「お嬢さん、座って!」

「え、ああ…。」

椅子の一つを促され、ナンバー5は思わずそれに従った。それから、考えるのは一旦やめておこうと思った。
とりあえず、今は彼らに付き合っておこう。何か考えたって、どうせ大声で邪魔されるだけだ。

小人たちは美味しいスープを作るから、と言ってキッチンへと向かっていく。
七人で行く必要性がどこにあるんだろうと思いながら、彼女は少し眩しすぎる日光に目を細めた。
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