Funny sweet-twins.
□エピローグ
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朝。
目指し時計の音で、羽川緋色は目を覚ました。
視界に入ったのは見慣れた自分の家の天井。
今までのは、全部夢?
体を起こし、ボーッとする頭で窓から景色を眺める。
それから何かを見つけてハッとする。
否、そんなはずはない。
急いで学校の支度をして、母親が何か叫んでるのも聞かず、外へ飛び出した。
「おっはよ!緋色!」
「さ、咲…!」
夢じゃない。
ちゃんと、目の前に親友の咲がいる。
「いやあ私行方不明になってたらしいんだけど記憶にないんだよね。朝起きてお母さん達に挨拶したら悲鳴あげられちゃうんだもん」
あはは、と呑気に笑う咲。
「赤い狼さん」の事件も夢じゃない。
緋色は無我夢中で学校へと走り出した。
「ええ!?何処行くの緋色!」
咲も慌てて緋色を追いかける。
ぜぇはぁ言いながら学校に着き、教室のドアを開ける。
クラスの半分程はすでに教室にいた。
緋色は昨日きた転入生の席があった場所を見る。
机が、ない。
緋色の視線に気づいたのか、数人のクラスメートが緋色に教える。
「何か家の事情でまた転校したらしいぜー」
「さっき先生が机片付けてたよ」
「一日で転校とか凄いよな」
「やっぱ赤い狼さんの事件解決したのってあの双子?」
「えー偶然っしょ」
それから皆の話題は「赤い狼さん」へと変わる。
あれから行方不明だった者が皆無事に家に戻っていたこと。
行方不明になっている間の記憶が全くないこと。
そして、緋色は気づく。
自分の机の中に、一冊の本があったこと。
タイトルは"赤頭巾"。
表紙には銀色の毛の狼が描かれていた。
「ずるいなぁ…」
まだ、お礼言ってないのに。
まだ、全然話してないのに。
笑顔が似合う、お喋りで甘党なミオン、
無愛想で不器用な、よく叫ぶシオン。
変わった双子と過ごしたあのおかしな夜を、緋色はきっと忘れないだろう。
「もう緋色ー!追いていかないでよ」
遠くから親友の声がする。
きっとこの後緋色は、笑いながら咲に駆け寄る。
そしてたくさん話をして授業を終え、いつものように一日が終わる。
また、いつもの日常に戻るのだろう。
平和、平凡、普通。
再び訪れる穏やかな日常の中へと戻るのだ。
けど緋色は双子の事を忘れない。
忘れることはできない。