短編集
□trick or treat?
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『trick or treat!!』
大久保さんの部屋の襖を開けながらそう言うと、驚いたように彼は振り向いた。
「とり……なんだ?」
『トリック オア トリートです』
「まじないか何かか?」
私はその質問には答えず、さっと大久保さんの前に座り、頬をつねった。
「いっ……!?にゃにをひゅる!!」(何をする!!)
いつも頬をつねられてばかりの私は、一度でいいから大久保さんにやり返してみたいと思っていたのだ。
『さっきの言葉、“お菓子をくれなきゃイタズラするぞ”って意味なんですよ。
大久保さんはお菓子をくれなかったから、これはイタズラです』
「なっ……!!」
私はしてやったり、と笑みを見せて彼から手を離した。
大久保さんは頬をさすり、不機嫌そうな顔をしている。
『いつもの仕返しですよ♪』
私は念願が叶い、とても浮かれていて、大久保さんが怪しく笑ったことに気付かずにいた。
『じゃ、私はこれで……』
「待て、小娘」
私が部屋に戻ろうと立ち上がろうとすると、大久保さんに引きとめられた。
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