最強B型ブラザーズ
□2003〜2004
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『二重になりたい』
アホみたいなタイトルですが(笑)、ちゃんとしたミンスのラブストーリーです!
では、どうぞ!
*
正直、全然かっこよくない。
他の三人のヒョン達はみんなかっこいいのに、どうしてこの人がこのメンバーにいるんだろう。こういう人は、アイドルっていう感じじゃ無いでしょう。ほんとの『歌手』っていう感じ。愛想を振りまいたり、かっこいいと賞賛されるよりも、ただほんとにその歌声を聴きにいくためにライブに行くような、そういう『歌手』なんじゃないですか。
「お前ら五人で、『東方神起』としてデビューすることが決まったよ。」
先生のその言葉と共に、集められた五人が顔を見合わせて歓喜の声をあげる。
「ほんとにーー!やったあ!ユノと一緒だ!!」
「ジェジュンと一緒だ!頑張ろうなこれから!」
右側では、年長二人組はもともと仲が良いらしく、二人で抱き合っている。
左側では、変わった声のあの人が、歓喜のあまりなのか、うわぁーーーーっと叫んでその場にかがみこんでいる。
うるさい。
以前から噂で聞いていた、アメリカからやってきたというかっこいい人が、僕の後ろにすっとやってきて、僕の肩を抱いた。
「ジュッ、ジュンスっ!ははははっ」
しゃがみこんだあの人を見て、高い笑い声を響かせた。
「チャンミン、よろしくね。」
そして僕の顔を覗き込んで、甘いその声で僕の名前を呼んだ。
素敵な人だな…
「はい。よろしくお願いします。」
「あれ?年下なんだっけ?」
「そうですよ。88年生まれです。」
「わっかいなあ〜はははっ」
いまだのたうちまわって歓喜の声を上げる左側の彼に、先生が笑いながらも起立するように命じた。
「とりあえずはチームワークのためにも、一緒に住んでもらうことになるからな。マンションはこちらで用意するから、各自ご両親に報告して、荷物をまとめておくようにね。」
先生のその声をぼんやり聴きながら、僕は冒頭のことを考えていた
。
左側の彼は、正直、全然かっこよくない、って。
*
あの後、簡単な自己紹介を終えて、各々の家に帰り、両親に報告をして、喜ばれて、抱きしめられた。
これからほんとうにがんばりどきね。と母に言われ、気持ちをひきしめた。
部屋に戻り、宿舎へ持っていく荷物をまとめた。
ベッドに横たわり、メンバーについて思い起こしてみる。
「…ユチョン…ヒョン」
いやあ、ほんっとかっこよかったなあ。なんだろう、なんか特別に顔がっていうんじゃなくて、雰囲気っていうか。
あのあとも、「俺らもいるから!」って言って、年長組ふたりを引き剥がしてくれたし、僕のことを紹介してくれたし、ありがたかった。リーダーがユノヒョンになることが決まったら、ユノヒョンは僕にすごく話しかけてくれて、可愛がってくれた。可愛がってくれたといえば、ジェジュンヒョンもだけど、彼はなんだか僕のことを見る目がちょっと、、なんていうかな…とにかく彼には食べられてしまいそうな感じがした。
あの苦手な人はジュンスという名前だった。他のレッスンクラスだったから名前は知らなかったけど、あの独特の笑い声で、手を叩きながら、わははっと騒いでいるところを見かけたことはあった。
ジュンスヒョンか、うーん、、
苦手だなあ。
僕と正反対な気がする。僕は人に対して気を使うようにって親に言われて育ってきたし、なにより甘えることが苦手だ。もちろん家事とかは甘えてるけど、自分のことで、同年代に甘えることなんて考えられない。しかし、ジュンスヒョンは既にユチョンヒョンへ甘えている姿を今日目撃したし、帰り際にも、喉渇いたなあって大騒ぎして、ユチョンヒョンにジュースをおごってもらっていた。もちろんユチョンヒョンはにこにこして嫌そうなそぶりはみせないけど、僕としては、イライラしていた。人に甘えることを得意とする人種だあれは。ああいうタイプはきまって甘えていることに気づいているのにそれを知らないふりをして甘えている。と僕は思っている。
自分自身ではやりたくないことを人に押し付けるのだ。
あの人、大っ嫌いだ。
それを甘やかす周りもどうかと思うけど、、
しばらく見なくなるであろう自室の天井を見つめ続け、あんなところにシミがあっただろうかと考えているうちに、僕は眠ってしまっていた。
その夜、夢は見なかった。