鹿×獅子

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______『それでもやはり、僕は貴方を赦すことはできないのです。』






妖艶に光る東京の月を見ています。

貴方が見ているのはどんな月なのでしょうか。


昨日、
久々の日本でのライブを終えた貴方は、

Twitterで己の日本でのショートバケーションを晒しました。



東京タワーをバックに決め顔の貴方の写真に悶えて惚けた女性は一体どれ程居るのでしょうか。


そう考える度に僕の嫉妬心は膨らんで往きます。


ジェジュン…


貴方に最期に直接言った言葉を覚えているのですか。


僕はやはり今も尚貴方を赦せるはずがありません。


日に日に溜まる疲労に、時折貴方のせいにしてイライラと腹が立つものです。

ユノヒョンの疲れた顔を見る度に、貴方への憎悪が増えて往くのを感じます。



ライブなんて、
そんなことをする前に僕にするべき行為が在ることを忘れているようですね。


ベランダに出ると、なんて妖艶な三日月なのでしょう。
官能的な眼差しで僕を照らしているようです。


僕はケータイ電話を手に取り、何年ぶりかに貴方の名前を検索します。


すると、古びたように視界にはいる貴方の名前が

何故かとても愛しく思えて泣きたくなるのです。


嗚呼、
幾度となく堪えてきた涙。

それをこんなところで流すわけにはいかないのです。

僕のプライドがそれを赦せないのですから。


僕はゆっくりと貴方の名前に触れます。

実際には画面なのですが、貴方の名前が其処に在るだけで、まるで貴方が其処にいるかのように思えてならないのです。

文字と化した貴方に触れると、

懐かしい番号が表示されます。


_______変わってしまっているかもしれない。



けれどそんなことは関係ないに等しい。


だって、貴方に電話を掛けると云うこと事態がこの儀式の主要なのですから。


番号と化した貴方に触れて、

携帯電話を己の耳に押し当てます。


『・・・・・・・・』




ワンコール

ツーコール


スリー……



『もしもし?』



「・・・・・・」



________掛かってしまったのですね。



こうなる事態も予想していたはずなのに、僕の頭の中は混乱状態になってしまいます。



『え?誰?もしもし…』


電話先からの応答が無いので、貴方は不安になります。


しかし僕はなんだかもうそれだけでも胸がいっぱいになってしまって、

電話を切ろうと思い
耳から少し携帯電話を離した______その時です。





『……チャミ…?』




小さな電子機器から聞こえた言葉に、頭が真っ白になります。



「…………」


『チャミでしょ…?ねぇ、なんで何も言わないんだよ…』


途端に胸が蝕まれたように苦しくなりました。


息をするのが難しくなるほど、胸の奥が痛むのでした。


「……………ッ」


『チャミ…あの、今、俺』


「…………さようなら。」





_________ツーツーツー


気がつくと僕は無意識に電話を終了していました。



ツーツーツー


そう聞こえて、意識を取り戻します。
しかし心臓の鼓動は修まらないまま。



バクバクと鼓動がして、
全身に血を流します。


暫し。

頭に昇っていた血が
身体中に張り巡らされている毛細血管を通って

僕を鎮静させます。




携帯電話はもう鳴りません。








携帯電話はならないけれど、


何故かインターフォンが部屋に響きました。


こんな時間に…
どうせまたユノヒョンがネットショッピングか何かで買い物をして、時間指定をしたのだと察知し


僕は玄関へ移動します。

ベランダへの通路は開け放してありましたので、

風がとても気持ちのよい秋の夜風が部屋に入り込みました。


ガチャ

「はい。」

ドアを開けると、
目の前にいたのは

宅配業者なんかではなく、





「な…んで…」






「チャミ…ッ…」



狂おしいほどに僕を狂愛させる、愛しい貴方なのでした。

_______ジェジュン





貴方をメディアで見る度に
その唇に己のそれを重ねたいと願いました。

貴方が歌を歌う度に、
僕の涙腺は弱くなって往くのを感じました。



貴方があの2人と笑顔でいる写真を見る度に
胸が締め付けられる思いでした。


ジェジュン

ジェジュン



その名前を口に出せずに数年。

頭のなかでは何度もこだましていたのに。


ユノヒョンへの遠慮がそうさせていただけではありません。

僕自身が怖かったのです。

恐れ戦いていた僕の方。


懐かしい貴方の纏う匂いに包まれると

自然と涙が零れました。 何故か泣きたくなったのです。

嗚呼、
僕はずっとこの温もりを待っていました。



変わらぬ愛を、
永久不変の愛を。



貴方もまた
僕と同様に泣いているようでした。




貴方だけに、

きっと
ずっと

会いたかった。






fin.
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