鹿×獅子

□さようなら愛しい人
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ひどく眠い。

なにもしたくないし
なにもされたくない

貴方がいなくなってから僕の心にはぽっかりと空洞ができてしまった。

ひとつの光を失った気がして

追いかけても追いかけてもなにも捕まらない


何度も足を止めて、
振り返るとなにもなくて。

けれども
前にはただ、貴方がいて
希望に変わっていた。


希望を無くした僕は
ただの空っぽな入れ物。

ふたりで歩いた道のりを消え去らないで。

ジェジュン。

貴方が居なくなって
僕にはなにもなくなったのです。

いくら歌っても踊っても
満たされない。

ジェジュン。

切ないのです。

貴方にこの想いを伝えるかわりに、小さくキスをしたとき、

僕の心は死んだのです。


「チャンミン。」


月明かり

リビングを真っ暗にして独り酒


「なんですか、ユノヒョン」

振り返らずとも
僕の側にいまいるのは

ただひとりだからわかるのです。

ユノヒョン

「お前、まだジェジュンのこと引きずってるのか?」

「......」

ユノヒョン

貴方が僕を支えて来てくれたことは十二分に解っています。

けれど
この心の穴は

愛を探しているのですよ。

愛に食らいつきたい。

他の誰でもない

ただひとりの愛を。


「最近、大丈夫かなって、思ってたんだけど…」

「......」

「お前の心はジェジュンの愛に飢えているんだろ?」


「......ッ」


「チャンッ…」






ぽた…



「......うっ…」




誰の涙?

僕の涙

僕の
心の


他の誰にも埋められない

ジェジュン

いくら回り道をしても
貴方と共にいたかった

なにもかも乗り越えられる気がした。

時間はもどらない。

何故

あのとき貴方を起こしてこの気持ちを伝えなかったのだろう。


ユノヒョンが僕を抱き締める。


「もう…忘れてよ…」

「ひっ…く…」

「帰ってきて…チャンミン。」

「.....」



違うよユノヒョン

あの朝に帰りたい。

帰りたいのはジェジュンのいた朝。


たとえ気持ちを伝えられなかったとしても、

僕が帰りたいのは
貴方のもとなのです。


涙が頬を伝う。

ジェジュン

僕の心が泣いています。

帰ってきて。


「.....ジェジュン…」


「......」


「生まれ変わっても、結ばれない。そんなこと解っています。ただ、夢でさえ会えたら、諦められたかもしれないのに…」


「チャンミン…」


「ひどい人ですよね…まったく…この僕をこんな目に逢わせるなんて。」


「.......」


ユノヒョンは僕を抱き締めたままなにも言わなかった。


背中に暖かい
涙が伝うのを感じた。


ユノヒョン、
泣かないで。


僕のためになんて泣かないで。


「ユノヒョン…」

「なぁチャンミン。」

「....」

「俺は、いつでもお前を抱き締めたかったよ。」

「え...」


「お前がジェジュンを愛しく見つめているときも、ジェジュンのせいで泣いていたときも、いつだって俺はお前を抱き締めたかった。」


「ヒョン…」


「お前の心の傷が塞がるときを待ってるよ…」


「.....」



待ってくれている人

ユノヒョン

僕はもうこんな切ない気持ちを味わいたくない。

ヒョンなら
気がついたときに僕を抱きしめてくれるのですか?

こんな心を埋めてくれるのですか


「ユノヒョン」



僕はユノヒョンの体温に身を任せた。


気持ちは形を変えて、

ジェジュン

貴方と僕は

生まれ変わっても結ばれない。


こんな運命を生きるしかない。


最後に伝えたかった。


ユノヒョンの体温に抱き締められながら僕は云う 。








「愛していました…」













さようなら。

愛しい人。






fin

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