Boys

□手紙
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『高森 棗 様
 僕はあなたを好きになる予定です。付き合って下さい。お返事待ってます』



 棗は自分の下駄箱の前で硬直したまま動けなくなった。
「…………何コレ」
 ノートの切れ端を半分に折っただけの紙切れを穴が空くほど凝視し、口の中で何度も手紙の内容を反芻する。
(…と、とりあえず…落ち着こう)
 ──棗の通う高校は男子校で、自慢できる話では決してないが…同性愛者は多い。
 棗は小柄で、容姿も時々女と間違われてしまうほど整った顔立ちをしている。狂った獣たちの恰好の餌食といってもいいぐらいの美貌だ。
 ところが、高校に入ってから現在に至るまでの3年間、不思議なことに同性愛者と直接関わりあう機会はなかった。花の青春時代に汚点を残さぬまま過ごせると安心していた…そんな矢先の出来事だった。
(どうしよう…名前も書いてないし…)
 棗はしばらく途方にくれていたが、下駄箱の前でいつまでも悩んでるわけにはいかないと、手紙を畳んでポケットにしまった。
「な〜つめちゃん!」
「!?」
 急に声をかけられて棗はぎくっと身を強張らせる。
「お、おはよう東條…」
「どしたの?棗。今隠したの何?」
「えっ…な、なんでもないよ…」
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