Boys

□宝賀
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「おはよう春日」
「…おはよ」
 棗より先に春日が教室に入ると、中から東條の明るい声が聞こえてきた。続いて棗が顔を出した途端、お、と東條はやけに嬉しそうな声を上げる。
「棗ちゃんおはよう。昨日の手紙どうなった?」
 東條の質問に答えながら、視線は春日の方ばかり気にしていた。椿と親しげに会話している彼が、ついさっきまであんな行為をしていたなんて、未だに信じられない。
「…なあ、東條。俺…手紙入れたの、春日じゃないかって思ったんだけど…」
「えー?それはねえだろ」
「どうして?」
 即座に否定されたことが意外で思わず目を見開く。
「春日はそんなことしねぇよ。あのインテリなメガネクンは、もっと賢いやり方でやるさ」
「そう…なのかな」
「俺はむしろ、智洋が一番怪しいと思う」
「ちひろ…椿が?」
 下の名前で示され、棗は咄嗟に誰なのか浮かんでこなかった。東條はクラスメイトを大抵下の名で呼ぶ。
「だって昨日のアイツ妙にしつこく棗に聞いてたじゃん。返事書くのか、とか」
「うん…最初は俺も疑ってたけど…」
 東條が棗の言葉に耳を傾けていると、廊下に担任の姿を捕らえて慌てて声を上げる。
「あ、宝賀が来たっ。またあとでな」
「あ、うん…」
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