Boys
□手紙
4ページ/9ページ
知らないフリをして、返事を書くかどうか直接確かめようとしているのなら…さっき言ったことにも納得がいく。
でも、もしそうだとしたら…椿は俺のこと──
──違う違う違うっ!
椿がそんなヤツなわけないだろ!
──結局、俺には椿を問い詰める勇気もなく、心の霧が晴れないまま一日が終わった。
俺は本当に小心者で臆病だから、いつも心残りな結果に終わってしまう。
正直…こんな自分なんか嫌いだった。
だけど…そんな俺を好きになってくれたヤツがいるんだ。
いや違う…好きになってくれそうなヤツ、か。
──翌朝。
手紙の返事を書こうか一晩中悩んだせいで、棗は寝不足だった。結局書かなかったから無駄骨だったが。
眠い目をさらに憂鬱そうに細めて、すし詰め状態の満員電車を睨む。人の波は立ち止まることを許さず、押し寄せる人混みの力で棗の体を電車の中へ流し込んだ。
150ちょっとしかない棗の体は容易く背広の男たちに挟まれ、全く身動きが取れなくなってしまった。いつものこととはいえ、気分は最悪だ。
しばらく電車の揺れをやり過ごしていると、下半身の辺りで妙な動きをする人の手の感触に気付いた。