Boys
□手紙
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(まただ…)
嫌悪感に眉をしかめる。小柄でいかにも気の弱そうな棗の体は、飢えた男たちの恰好の餌食にされてしまうのだ。
毎朝のことだから、もう慣れた。別に減るわけじゃないし、今さら大声で「痴漢です」なんて言えるわけないし。
無表情を装って嫌悪感に耐えていると、後ろばかりを撫でていた手が前に回った。
(んっ…)
ピクンと眉が動いたが、落ち着き払った姿勢は崩さない。
股間にまで手を伸ばす輩は少ないのだが、向こうも男相手は承知なのだろうから、覚悟はしていた。
大胆な手つきで棗の自身を布越しに揉みしだく手。それがどこから伸びてきたものなのか、棗は確認できなかった。したくなかった。
自分を犯す相手が確認できたところで、何もできやしない。相手が予想通りのエロ親父だろうが、意外な好漢だろうが。
(で、も…っ)
今回の相手は手強い。あまりにも大胆過ぎて、油断したら最後…
「──あ、高森…」
「かっ、春日…っ!?」
停車して視界が人ひとり分空き、春日の姿が目の前に現れた。
「おはよう」
「お、おはよう…今日も、混んでるね…」
装う笑顔が微妙に引きつっているのが自分でもわかる。