Boys

□宝賀
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 そして──放課後。
 掃除が終わって棗は自分の席に着き、決心できない様子で無意味に机や鞄の中を漁った。

「棗ー?お前、宝賀に呼出しされてんじゃねっけ?」

 バスケのユニフォームに着替えながら、東條が思い出したように聞いてきた。棗は困った顔を向ける。

「ん…まだ心の準備ができてなくてさ…」

「でも時間遅れたらヤベくね?早く行った方がいいって」

「あっ!そうかごめん!」

 慌てて席を立ち、東條に礼を告げながら棗は教室を出た。



 ──と、飛び出してきたものの、やはり気は向かない。廊下を進む足取りは重く、無意識のうちに前屈みの状態で歩いていた。
 あぁ…そこの角を曲がればすぐ化学室だ。どうしよう…逃げちゃおうか…でも明日結局教室で会うことになるんだし…
 たった数メートル先の角までの道程が、恐ろしいほど長く感じる。それでも一歩一歩…棗は化学室を目指す。
 ようやく角を曲がると、そこには目的の部屋があった。だが…

「あれ…」

 化学室のドアにカーテンが引かれていた。遮光用の真っ黒いカーテンに遮られて、中の様子を窺うことができない。
 なんだろう…実験か何かで、まだ使ってるのかな…
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