Boys

□宝賀
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 ドアのすぐ近くまで歩み寄り、カーテンのわずかな隙間から中の様子を覗き見る。

「中も、真っ暗…?」

 どういうことだろう。化学室は放課後、どの部も使用していないはず。それに宝賀は確かに「放課後化学室に来い」と言っていたのに。
 入ってもいいのだろうか…
「……失礼しまーす…」
 そっとドアを開け、カーテンの裾をかいくぐって恐る恐る中に入ると、部屋の中は一筋の光も射さない真っ暗闇だった。
 誰もいない。光に目が慣れていたせいで何も見えなかったが、人の気配なんて全然なかった。
「…せ、先生?高森です…いませんか…宝賀先生?」
 震える声で呼びかけても、返事はない。
 まさか脅かそうとしてるのだろうか。…いや、あの先生に限ってそんな子どもみたいないたずらはしないだろう。
 気を取り直して手探りで壁をつたい、蛍光灯のスイッチを点けた。
「わ…眩し…!」
 パッと点灯した明かりに目を射抜かれ、思わず目を細める。
 だが次の瞬間──

 ──カチッ

「え──?」
 急に目の前が真っ暗になり、電気の消える音がし、スイッチに置かれた手の上にひやりとしたものが触れる。妙な順序でそれらが棗の神経を刺激し、恐怖に似た緊張感を駆り立てた。
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