Boys
□宝賀
6ページ/15ページ
ドアのすぐ近くまで歩み寄り、カーテンのわずかな隙間から中の様子を覗き見る。
「中も、真っ暗…?」
どういうことだろう。化学室は放課後、どの部も使用していないはず。それに宝賀は確かに「放課後化学室に来い」と言っていたのに。
入ってもいいのだろうか…
「……失礼しまーす…」
そっとドアを開け、カーテンの裾をかいくぐって恐る恐る中に入ると、部屋の中は一筋の光も射さない真っ暗闇だった。
誰もいない。光に目が慣れていたせいで何も見えなかったが、人の気配なんて全然なかった。
「…せ、先生?高森です…いませんか…宝賀先生?」
震える声で呼びかけても、返事はない。
まさか脅かそうとしてるのだろうか。…いや、あの先生に限ってそんな子どもみたいないたずらはしないだろう。
気を取り直して手探りで壁をつたい、蛍光灯のスイッチを点けた。
「わ…眩し…!」
パッと点灯した明かりに目を射抜かれ、思わず目を細める。
だが次の瞬間──
──カチッ
「え──?」
急に目の前が真っ暗になり、電気の消える音がし、スイッチに置かれた手の上にひやりとしたものが触れる。妙な順序でそれらが棗の神経を刺激し、恐怖に似た緊張感を駆り立てた。