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□☆cool on the...
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 そう、その愛は世界級。



 WBC──ワールドベースボールクラシック。
 サッカーにW杯があって世界の王者を争うように、野球でも世界の頂点を決める大会が催されることになった。
 セパ両リーグと大リーグで活躍する選手を募り、結成されたWBC日本代表。選りすぐりのエリート集団の中に、彼──青木宣親の名があった。

 今日は日本での交流試合。腕慣らしとはいえ対巨人戦だ。気を抜くことはできない。
 場面は4回裏、後攻巨人の攻撃。両者無得点。だが一死一・三塁の大ピンチ。追い詰められた先発・和田の前に立ちはだかるのは、5番打者・巨人軍新キャプテンの小久保。大量失点だけは避けたいところだ。
 グラブを着けた手にも、思わず力が入る。外野手・青木は固唾を飲んで、グラウンドの外れからマウンドを見つめる。

(頑張れ、和田先輩…!)

 大学の一年先輩に当たる和田は、青木にとって尊敬に値する存在だ。是非とも目の前の難敵を討ち取り、巨人に向いた流れを変えてほしい。
 内野は併殺狙いの前進守備体勢。そしてサウスポーは大きく振りかぶり、渾身のストレートを放つ。



 ──カアンッ



 ドーム全体の視線が天井を仰ぐ。
 詰まった!内心でガッツポーズしながら、打球を追って定位置のセンターポジションからライト方向へ走る。
 だが捕球するわけではない。落球したとき──彼に限って到底有り得ない話だが──のバックアップに行くだけ。高く放物線を描いた飛球の着地点目掛けて駆け抜けたのは、

「I got it!」

 本場の米野球を思わせる英語の掛け声。任せろ、とその言葉が示すとおり、青木はイチローから少し離れた後方へ回る。
 ライトフライを確信して三塁を見やる。タッチアップで先制のホームを踏もうと構えている三塁ランナーは代走の鈴木。巨人の中でも特に駿足を誇る厄介な選手だ。
 落ちてきたボールを、イチローは難なくキャッチした。2アウト。ランナースタート。それを見るが早いか助走に入るのが早いか、軽い身のこなしで送球体勢をとる。

(…レーザービーム…!)

 外野手にとって憧れとも言えるその技が、目の前で見られる──青木は興奮しながらイチローの背を見つめた。
 投げた!ボールは吸い込まれるようにホームへ一直線に伸びる。
 セカンドの宮本は…避けた!確かに中継がなくてもホームを刺せる勢いは充分ある。ホームベースを守る城島は絶好の位置で送球を待ち構える。寸分の狂いもなくホームを目指すボールが早いか、鈴木の走塁が早いか…息を飲む観衆の目はバッターボックスに釘付けになる。
 ボールがミットに収まる。ほぼ同時に滑り込んだ鈴木と城島が激しくぶつかるように交錯した。判定は、

「──アウトォ!」
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