魔の預言者 本
□第十四話
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「いやぁあああッ!」
突如、森の奥から聞こえてきた、クラスメートであるしえみの叫び声。それを聞いた竜士は、急いで悲鳴が聞こえた場所へと向かった。その時…
「うっ!!」
目の前が、青く光り輝いたのだ。まるで、サタンの青い焔のように。
茂みをかき分けていくと、そこに居たのは燐と、しえみの腕の中でぐったりとしている海。
…青い光のことも確認したいが、今は…
「……何や、今のは」
「勝呂…」
「如月は、大丈夫なんか」
「た…多分。一応息はしてる。頭から血ィ出てるけどな」
たどたどしく説明する燐。
「…ライト消せ。蛾は光に集まって来とるんや」
「えっ、そうなの?」
見られていない…?燐の頭に、疑問が浮かぶ。
「それはそうと、今の青い光はなんやったん。暗闇で急に光ったから目ェ眩んで、よう見えんかったけど」
来た。燐の心が、恐怖で震える。誤魔化さないと…それだけだった。
「さ…さあ。俺も良く見えなかった!多分アレだアレ!アレ…?アレって何だ…?」
「………」
自分でも言っていることが分からなくなってくる。
「つーか、お前は何しに来たんだよ!」
「何て…!助けに来たんやろ」
「お前、助け合いはナシとか、何とか…」
「やっ、やかましい…!あない断末魔みたいな悲鳴聞いたら、放っとかれへんやろ!」
無理矢理話題を変えたら、上手くいったようだ。海の傍で、フェンリルとゼルが、安堵のため息をついている。
『うっ……』
「目ェ覚めたか!!」
「海ちゃんっ…!」
『ぐえっ』
拠点に戻ろうかと考えていた時、しえみの腕の中から、軽くうめき声が上がった。
『し、しえみ…手ぇ離せ…』
「あ、ごめんね…」
あまりの嬉しさで、海の首を絞めていたしえみ。手を緩めてもらうと、その場で立ちあがる。
「おい、まだ無理しねぇほうが…」
《そうだよ!》
『別に大丈夫だ』
傍に来た燐の手を払いながら、上空を見上げる。そのまま右手を口元に当てる。
ピュ――――ィ
暗闇に響く、指笛の音。すると、どこからともなく一羽の鴉がやって来て、海の肩にとまった。
『他の皆はどうだ?ラウム』
《宝って奴と、出雲って奴はとっくに提灯を見つけて移動中。三輪って奴が、今残ってるメンバーで最も提灯に近いかな》
『そうか。そのままオレの頭上を飛んでろ。………他の奴らに危険が及ぶようなことがあったら、オレの許可なしに行動を開始しろ』
《了解っ》
ラウムは肩から飛び上がり、森から出ると、姿を消した。気配はあるから、きっと近くに居るはずだ。
……しっかしよぉ……
『…おい、廉造。居るんだろ』
茂みに向かって声をかければ、ライトを咥えた廉造が飛び出してくる。
「海ちゃーん!!助けてーなぁああああ!」
後ろにはライトの光に集まって来た蛾の大群。
《ねぇ、食べていい!?》
『勝手にしろ。…廉造、ライト消せ』
「へ?」
『いいから消せ』
再びゼルが巨大化し、蛾の悪魔を喰ってる隙に、廉造のライトを消させる。
『虫は光に集まってくるんだ。それぐらい知っておけ』
「ハ、ハイ……」
今だ顔を青ざめさせたままの廉造に、軽くため息をついた。
ブ――――ッブ――――ッ
チャカチャカチャカチャカ♪
「ん?」
「あ!俺も?」
突然鳴りだした竜士と廉造のケータイ。
「子猫丸からや」
皆で内容を見た後、脅える廉造をどつきながら場所を移動することになった。