魔の預言者 本

□第十五話
1ページ/3ページ






アマイモンの掛け声とともに、こちらへと向かってくるベヒモスという名の子鬼。



「ボヤッとするな!」



ベヒモスに一撃入れたシュラは、短く指笛を噴いた。途端、地面から蛇が現れ、昼間描いた魔法円が光り、結界が張られた。



「魔法円を描いたときに中に居たものは守られ…それ以外を一切弾く、絶対防御壁だ。まあ、しばらくは安全だろ」


「絶対防御壁…!?」


「これも訓練なんですか?いくらなんでもハードすぎじゃ…」


「そんなことより、さっきのは何なんですか!?」


「訓練は終了だ。今からアマイモンの襲撃に備える」



その言葉に、周りに居た全員(宝を除く)の表情が固まった。



「アマイモンって…八候王(バール)の一人の…“地の王”ですか?さっきのが!?」


「そうだよ。祓魔師程度じゃ到底敵わない超大物だ。だから防御するってんだろ?ホラ、並べ!」



並んだ順に聖水をかけていくシュラ。しかし、その手は海と燐のところで止まった。



「…よし、まあこれでいざ何かあっても、体が乾ききるまでダメージを軽減するだろ」


「…!?奥村と如月にはなんもせえへんのですか?」


「あー…こいつらはなんつーか、聖水アレルギーでさー」


「聖水アレルギー!?」



苦しすぎるい言い訳で何とか切り抜る。隣では出雲が携帯を使って連絡を取ろうとしているが、つながらないらしい。



「おい…さっきの奴、理由は知らねーけど、多分俺が目的なんだ!!」


「知ってるよ。まぁ、安心しろ。この障壁は地の王だろうと、並大抵では破られない作りだ。…だが奴も、今回は多少計画的みたいだしなァ。
次に地の王が仕掛けてきたときは…お前はすぐに降魔剣と海と一緒に此処から離れろ」



手渡されたのは、勝って取り返せと言われたクリカラ。



「どうしたんだ?ホレホレ、あんなに返せ返せって言ってたくせにィー♪」


「お前は俺の炎を押さえたいんじゃないのか?“炎を出すな”って忠告しただろ!!」


「うるさいよバカ。一応忠告したのに出しちゃったじゃん、お前。にやっははははー」


「……!」



ごもっともだ。



「…つまりだ。お前みたいな奴がこれから炎なしで、どうやって戦うんだ?地の王は雑魚じゃないぞ。考えてみろよ。え?考えろ!!」



突然真剣な雰囲気をまとうシュラ。その目は真剣そのものだ。



「如月さん!?」


「ちょ……アレ……!?」



突然子猫丸の叫ぶ声が聞こえたかと思うと、魔法円の外へと歩く海の姿があった。



『(体が……言うことを気かねぇッ!)』


《海!》


《おい、海!?》



ゼルとフェンリルが叫んでも、戻ってくる気配すらない。ただ、両手を血が滲むほど強く握っていた。



「おいおい!何やってんだよ!(ってあれ、寄生虫か…!?)」



気付いた時には既に遅い。魔法円の外に出た海は、側にやってきたアマイモンの腕の中。



「その娘に何をした、アマイモン!」


「ん?チューチの雌蛾に卵を生み付けてもらいました。孵化から神経に寄生するまで随分時間がかかりましたが。
これで晴れてこの女…魔の預言者は、ボクの言いなりだ」



その場から跳び去ったアマイモンの後を、追いかけていく燐。しかし、その前にベヒモスが降り立つ。




キィンッ




「行け!!アタシも後を追う」


「く……!」


「奥村!!」


「お前らは死んでもその障壁から出るなよ!!」


「そんな……」



シュラからクリカラを受け取り、走り去っていく燐。その姿に、竜士は言いようのない怒りがこみ上げてくるのを感じた。












「待て!!テメー、この間と言い何なんだ!!海をどうする気だよ!!」



アマイモンを追いかけていた燐は、ようやく追いついた。体力だけは宇宙並の彼だからこそ、追い付けたのかもしれない。



「どうしましょうか。…うーん…そうだ、この女はボクのお嫁さんにしよう。そうなったら、早速契約しなくては」



いい案だと言わんばかりの、嬉しそうな声。



「はぁ!?」



一方燐は、怒りを含んだ声だ。



「“アナタは病める時も健やかなる時も、ボクを愛し、ボクを敬い、ボクを助け、その命の限り、堅く節操を守ることを誓いますか?”」


『……………』



アマイモンの問いかけに、うんともすんとも言わず、首を縦にも横にも振らない海。



「どうしました?」



その時だった、一瞬海に炎が灯ったかと思うと、海の目に光が灯った。




 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ